自転車で転倒したら、まず周囲の危険とけがの状態を確認しましょう。頭を打った、意識がいつもと違う、出血が多いといった場合は、自転車を起こして帰ることより、救急への連絡や手当を優先します。
また、転倒後は体だけでなく車体の点検も必要です。この記事では、転んだ直後に判断したいことから、雨や段差、荷物の巻き込みによる転倒を防ぐ方法まで、順番に説明します。
- 転倒直後の安全確認と受診の目安
- 単独事故の届出と保険の確認
- 転倒後の車体点検と走行中止の判断
- 雨・段差・巻き込み・子ども同乗時の転倒予防
自転車で転倒した直後の対応と確認すること
まず周囲の安全とけがを確認|頭を打ったら受診を優先

最初に見るのは、後続車などによる二次事故の危険がないか、その人に反応や呼吸があるかです。日本赤十字社は、周囲の危険を排除することが難しい場合には、対応できる専門機関へ通報するよう案内しています。詳しく調べようとして、119番通報や手当を遅らせないことも大切です。
頭を強く打ち、意識がない、手足がまひしている、耳・鼻・口から血や液体が出るといった異常がある場合は、重症の可能性があります。北海道医師会は、こうした症状が一つでもあれば、一刻も早く119番通報または脳神経外科などへ、と案内しています。体を揺すったり首を曲げたりすることも避けてください。
意識があっても、「事故の前後を覚えていない」「手足に力が入りにくい」「しびれる」「けいれんがある」「吐き気・めまい・頭痛がある」ときは受診が必要です。中野区も、頭を打った後のこれらの症状を、医療機関を受診する目安に挙げています。
注意したいのは、転倒直後に症状がそろうとは限らないこと。頭を打った影響は、数時間から数日、場合によってはさらに後に現れることがあります。北海道医師会は、頭部を強打した場合、特に異常がなくても念のため受診し、その後も2〜3日は注意深く観察するよう案内しています。
「今は話せるから大丈夫」と、その場の様子だけで済ませないようにしましょう。
すり傷は流水で洗う|多い出血や骨折の疑いは別に対応
ひざや手のすり傷は、水道水などの清潔な流水で十分に洗い、砂や泥を落とします。消防庁は、汚れた傷口を放置すると、化膿したり傷の治りに支障が出たりする場合があると説明しています。
小さく見える傷でも、汚れを残したまま様子を見るのは避けましょう。
一方、大出血は直ちに止血する必要があります。日本赤十字社が基本としているのは、出血している傷口をガーゼやハンカチなどで直接強く押さえ、しばらく圧迫する方法です。止血の手当を行い、医師の診療を受けます。他の人を手当する場合は、できる限りビニール手袋やビニール袋を使い、感染予防に努めてください。
傷口が大きい・深い場合は、速やかに形成外科を受診しましょう。日本創傷外科学会は、小石やガラス片、砂やアスファルトなどが傷に残ると、膿んだり色のついた傷あとが残ったりすることがあると説明しています。異物の除去には、医療機関で麻酔などを使った処置が必要になる場合もあります。
肩・腕・足などを強く打ち、骨折や捻挫が疑われるときは、患部を動かさないようにして速やかに受診します。転倒した瞬間には痛みがなくても、時間がたってから痛みを感じたり、手をついた衝撃で鎖骨を傷めたりする場合があります。傷口の手当が終わっても、痛みの変化には目を向けておきましょう。
単独転倒でも事故は警察へ|接触していない事故にも注意
自転車による交通事故にも、警察への報告義務があります。負傷者がいれば救護も必要です。「自分だけで転んだから」という理由で届出を省かないでください。西東京市も、自転車の単独事故のような小さな事故であっても、すぐに警察へ届け出るよう案内しています。
相手がいる場合は、ぶつかったかどうかだけで事故を判断しないことも大切です。愛知県警察は、車や自転車が直前を通過・接近し、相手が急ブレーキをかけて転倒したケースについて、直接衝突していなくても交通事故になり、直ちに届出が必要だと説明しています。
けががなく、物が壊れただけの交通事故にも届出が必要です。また、車と自転車が衝突した後、自転車側が「大丈夫」と言って立ち去った場合でも届出は必要、と愛知県警察は案内しています。その場で交わした言葉だけで、事故の対応を終えないようにしましょう。愛知県警察の交通事故FAQ
届出は、その後の証明にも関わります。西東京市は、警察に届け出ていない事故では交通事故(人身)証明書の交付を受けられないと説明しています。同市の交通災害共済では見舞金の請求にこの証明書が必要です。ただし、この共済の請求条件を、すべての保険に共通する条件として考えることはできません。
転倒後の自転車はそのまま乗れる?強い衝撃や異常は点検へ


転倒後は、「タイヤが回る」「見える傷が少ない」だけで再び乗れると判断しないでください。パナソニックは、転倒などで強い衝撃を受けたときや、部品のがたつき・緩み・変形・異音があるときには、すぐ点検を受けるよう案内しています。
販売店へ相談する際に関係する、主な確認箇所は次のとおりです。これは、すべて問題なければ安全だと保証するチェック表ではありません。
| 確認箇所 | 点検・相談が必要な異常の例 |
|---|---|
| フレームや前輪を支える部分 | 破損、ゆがみ、ひび割れなど |
| 車輪まわり | 車輪の振れ、スポークの緩みなど |
| 変速まわり | 切り替えの遅れ、異音、動作の不調 |
| 車体の各部 | がたつき、緩み、変形、普段と違う音 |
MERIDAの日本語説明書は、転倒による損傷には、車体を分解して初めて見つかるものもあると説明しています。特にカーボン製のフレームやフォークについては、衝撃による損傷を直ちに確認できない場合があるとの注意があります。外観の確認だけで分からない損傷があるため、不安が残るときは販売店へ相談しましょう。
同説明書では、損傷が見つかった場合や異常な音が聞こえた場合には、走行を続けないよう警告しています。ハンドルや車輪のずれを見つけたときも、見た目を戻すだけで対応を終えず、車種に合った点検を依頼してください。MERIDAの日本語説明書
単独転倒のけがは保険の対象?自分の補償と賠償を分ける
単独転倒で自分がけがをした場合、補償を受けられる保険はあります。ただし、「自転車の保険に入っている」というだけでは判断できません。まず、自分のけがに対する補償と、他人に損害を与えた場合の補償を分けて見ましょう。
| 確認したいこと | 補償の考え方 |
|---|---|
| 転倒して自分がけがをした | 自分のけがを補償する保険・特約があるかを見る |
| 相手をけがさせたり、相手の物を壊したりした | 法律上の賠償責任に対する補償があるかを見る |
| 自分の契約で対象になるか分からない | 保険証券や契約者向けページを確認し、代理店・保険会社へ問い合わせる |
東京海上日動は、自分のけがに対する保険と、相手への賠償に対応する個人賠償責任補償特約を分けて案内しています。同社のこの特約は、日常生活に起因する偶然な事故などで法律上の賠償責任を負った場合の補償で、業務上の事故による損害は対象外です。
自分の通院費と相手への賠償を、同じ補償として考えないことがポイントです。
自動車保険の特約で対応する例もあります。あいおいニッセイ同和損保の公式FAQでは、対象の自動車保険で人身傷害保険に「交通事故特約」をセットした場合、自転車で転倒した自分のけがを補償できると案内しています。契約の有無や対象者などの条件があるため、自分の契約内容と照らし合わせてください。
自転車の転倒を防ぐために見直したい走り方と準備
雨と段差では無理をしない|降りて押す判断も大切
雨の日は路面が滑りやすく、バランスを取りにくくなります。さらに、雨粒やフードなどで視野が狭くなり、周囲の音も聞こえにくくなるため、晴れた日と同じ感覚で走らないことが大切です。東京都は、時間に余裕を持ち、周りを十分に見ながらゆっくり走るよう呼びかけています。
同都の注意喚起には、雨の中で十分に速度を落とさず曲がって横転した例や、風でポンチョが顔に張りつき、前が見えなくなって転倒した例が掲載されています。雨具を着ていても、視界や風の影響までなくなるわけではありません。強風や激しい雨のときは、別の交通手段を使えるよう普段から考えておきましょう。
段差も転倒につながる場所です。藤井寺市は、車が沿道の敷地へ出入りするための歩道の「車両乗り入れ部」に、自転車で斜めに進入すると、段差でスリップ・転倒するおそれがあると注意しています。この場所では、一旦降りて押して乗り入れるよう案内しています。
ここで気をつけたいのは、「段差なら角度をつければ必ず越えられる」と考えないことです。車両乗り入れ部については、道路管理側が降りて押す対応を示しています。転倒を防ぐためには、乗ったまま通る方法だけでなく、自転車から降りる選択も持っておきましょう。
傘・買い物袋・衣服の巻き込みを防ぐ


買い物袋や傘をハンドル・手首にぶら下げて走るのは避けましょう。NITEは、これらが車輪に巻き込まれると車輪がロックし、バランスを崩して転倒するおそれがあると説明しています。荷物はハンドルに掛けず、かごへ入れるよう案内しています。
かごを使う場合も、その積載条件を守る必要があります。パナソニックは、バスケットの積載条件に加え、バスケットカバーのたるみや破れも確認するよう案内しています。荷物をどこに置くかと、使うかご・カバーの条件を合わせて見直してください。
巻き込まれるものは荷物だけではありません。NITEが紹介する事故・ヒヤリハットでは、傘、スカートなどの衣服、ひもを含む荷物、靴などが車輪に挟まっています。出発前には、荷物のひもや衣服も車輪への巻き込みの確認対象に入れましょう。
傘を差しながらの運転もやめましょう。東京都は、視野が遮られることや、とっさにブレーキをかけられないことを危険として挙げています。また、警察庁は通話しながらの運転についても、片手運転になりブレーキをかけにくくなると説明しています。
転倒対策では、路面だけでなく、手や視線を取られる行動も見直したいところです。
子ども同乗時は停車中にも注意|乗せたまま離れない
子どもを乗せた自転車は、走っていないときも転倒に注意が必要です。大阪府警察は、子どもを座席に乗せた自転車はとても不安定で、わずかな傾きや子どもの体重移動が転倒につながると説明しています。停車中の対策は、平らな場所にスタンドを立て、子どもを乗せたまま自転車から離れないことです。
走行中は段差に加え、子どもが動いたときのふらつきにも気をつけます。同府警は、シートベルトを締め、子どもには身を乗り出さないよう教えることを呼びかけています。出発前には、子どものヘルメットも忘れずに。
段差について大阪府警察は、速度を落とし、できるだけ大きな角度で乗り越えるよう案内しています。ただし、前の節で触れた歩道の車両乗り入れ部では、藤井寺市は降りて押すよう求めています。後者のように対象の場所に具体的な注意がある場合は、その案内に従いましょう。
走行中はシートベルトと身を乗り出さないこと、停車中は場所選びと離れないこと。子ども同乗時は、この両方が必要です。速度を落として走ることだけで対策を終えず、乗せて待っている時間も含めて考えてください。大阪府警察の転倒防止案内
乗る前の点検とヘルメット|衝撃を受けたものは見直す


再び乗るときは、走り方に気をつけるだけでなく、車体の状態も点検しましょう。NITEは、乗車前の確認として、車輪への巻き込み、ブレーキ、チェーン、車輪・ハンドルまわり・ペダルの緩みやがたつきなどを挙げています。
| 乗る前に見るところ | 主な確認内容 |
|---|---|
| 車輪の周辺 | 泥よけの変形・外れ、傘や袋などの巻き込みのおそれ |
| ブレーキ | レバーの動きと効き具合 |
| チェーン | たるみ、油切れ、ひどいさびなど |
| 車輪・ハンドル・サドル・ペダル | 固定部の緩みやがたつき |
| タイヤ・灯火類 | 空気不足、ライトや反射板の状態 |
ブレーキは、自転車から降りた状態でレバーを握り、車体を前後に動かして滑りがないかを確認する方法がNITEから示されています。効きが甘い、逆に固すぎるといった場合は調整が必要です。自転車技士や自転車安全整備士のいる店舗への相談も案内されています。
泥よけの曲がりも、単なる見た目の問題ではありません。NITEは、曲がったり外れたりした泥よけが車輪に巻き込まれるおそれを指摘しています。
チェーンの伸びやひどいさびがある場合も販売店などへ相談し、日常の確認に加えて定期的な点検を受けましょう。
ヘルメットも転倒後の確認対象です。NITEは、転倒してヘルメットを打ち付けた場合、外観に大きな損傷がなくても内部の衝撃吸収素材が傷んでいる可能性があるため、新しいものへ交換するよう案内しています。
Kabutoの公式FAQも、一度強打したものは次に本来の性能を発揮できないおそれがあるとして、交換を勧めています。
ヘルメットは、交通事故による被害を軽減するためのものです。着用に加え、衝撃を受けた後の交換と、本体や取扱説明書に記載された交換目安も見直してください。車体の点検と合わせて、次の乗車に備えましょう。NITEの乗車前点検・ヘルメットの案内
自転車で転倒したときの対応と予防のまとめ
この記事のまとめです。
- 転倒直後は周囲の危険とけがを確認し、観察に時間をかけて通報や手当を遅らせない
- 頭部を強打して意識の異常やまひなどがあれば緊急対応を優先し、症状が遅れて出る場合にも注意する
- すり傷は清潔な流水で洗い、大出血は直ちに止血、骨折や捻挫の疑いは患部を動かさず受診する
- 単独の交通事故も警察へ届け出る。直接接触せず相手を転倒させた場合も交通事故になる
- 強い衝撃を受けた車体や、緩み・変形・異音などがある車体は点検へ。外観だけで再使用を判断しない
- 単独転倒の自分のけがと相手への賠償では、確認する保険・特約が異なる
- 雨天は周囲を見ながらゆっくり走り、強風や激しい雨には別の交通手段を検討する。歩道の車両乗り入れ部は降りて押す
- 傘や袋をハンドル・手首にぶら下げず、衣服や荷物のひもの巻き込みにも注意する
- 子ども同乗時はシートベルトを締め、停車中も乗せたまま自転車から離れない
- 乗車前点検と定期点検を続け、転倒で打ち付けたヘルメットは外観に大きな損傷がなくても交換する
参考にした情報
- 自転車の交通ルール|自転車ポータルサイト
- 応急手当Web│ケガ・事故(一般)│頭の強打
- サポート|電動アシスト自転車/自転車|Panasonic
- 脳を守ろう!MTBI(軽度外傷性脳損傷) | 中野区
- 雨の日の自転車走行は危険がいっぱい…十分に気をつけましょう! | 東京くらしWEB
- 転倒事故を防ぎましょう!(チラシ) HTML版/大阪府警本部
- 交通事故に関すること – 愛知県警察
- 自転車運転中の事故を補償する商品について | 個人のお客様 | 東京海上日動火災保険
- 応急手当WEB講習
- 状況の観察・傷病者の観察|講習の内容について|講習について|日本赤十字社
- 何気ない行動が危険⇔安全の分かれ道⁉ 冬の健康安全お役立ち特集|赤十字NEWSオンライン版|広報ツール・出版物|赤十字について|日本赤十字社
- Q&A(よくある質問) (自転車)|自転車用ヘルメット&ギア|Kabuto
- 歩道の車両乗り入れ部での自転車の転倒やスリップにご注意ください/藤井寺市
- 【自動車】自転車で転倒して自分がケガをした場合に補償される保険はありますか? | よくあるご質問|あいおいニッセイ同和損保
- MERIDA Bikes Manuals
- 交通事故にあった場合 西東京市Web
- 製品安全情報マガジン Vol.499 4月28日号「自転車の事故」 | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構
- 多量の出血|講習の内容について|講習について|日本赤十字社
- すり傷|一般社団法人 日本創傷外科学会 一般の皆様へ










