走行中に突然ペダルが軽くなり、「ガシャン」という音と共に自転車のチェーンが外れた経験はありませんか?
焦ってしまいますが、実は直し方は意外と簡単です。
この記事では、ロードバイクやママチャリなど車種別のチェーンの直し方を、写真付き(のイメージ)で分かりやすく解説します。
さらに、チェーンが外れた根本的な原因や、再発を防ぐための日常メンテナンス方法まで徹底的にご紹介。この記事を読めば、もうチェーン外れのトラブルで慌てることはありません。
- 落ち着いて対処するための初期行動と安全確保
- ロードバイクとママチャリ、車種別の直し方を解説
- チェーンが頻繁に外れる根本的な原因を5つに分類
- 再発を防止するための日常メンテナンスと変速のコツ
【緊急】自転車のチェーンが外れた時の完全対処マニュアル
- まずは落ち着いて!安全確保とやってはいけないこと
- 外装変速機(ロードバイク等)のチェーンの直し方
- 内装変速・変速なし(ママチャリ等)の直し方
- どうしても直らない?頑固なチェーン外れの特殊ケース
- フレームの傷は大丈夫?チェーン落ち後の点検ポイント
まずは落ち着いて!安全確保とやってはいけないこと

走行中にチェーンが外れると、ペダルが急に空転するため驚くかもしれませんが、まずは冷静になることが最も重要です。パニックにならず、安全を最優先に行動してください。
最初にすべきことは、ペダルを漕ぐのを直ちにやめることです。チェーンが外れた状態で無理にペダルを回そうとすると、チェーンがギアやフレームの間にさらに深く噛み込んでしまい、状況を悪化させる最大の原因となります。特にカーボンフレームの場合、金属のチェーンがフレームを削ってしまい、高価な修理が必要になることもあります。これは単なるアドバイスではなく、二次被害を防ぐための絶対的なルールです。
ペダルを止めたら、周囲の交通状況を確認し、安全に路肩や歩道などへ自転車を移動させましょう。後続の車や歩行者の邪魔にならない、平坦で安定した場所で作業するのが理想です。自転車を停めたら、変速機を操作したり、ペダルを逆回転させたりする前に、まずチェーンがどのようになっているのかを目で見て状況を把握することが大切です。慌てて行動すると、簡単なトラブルが複雑な問題に発展しかねません。安全な場所で、落ち着いて自転車の状態を確認することから始めましょう。
外装変速機(ロードバイク等)のチェーンの直し方
ロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクなどに採用されている外装変速機は、一見複雑に見えますが、チェーンを直す仕組みは非常にシンプルです。基本は、後輪側にある変速機(リアディレイラー)の一部を手で押してチェーンをたるませ、その隙に手でチェーンをギアに戻す、という手順になります。手が汚れる可能性が高いので、携帯用のゴム手袋などがあると便利です。
チェーンがどこに落ちたかによって、少しだけ手順が異なります。以下の表を参考に、ご自身の状況に合った対処法を確認してください。
発生場所 | 状況 | 初期対応 | 考えられる原因 |
フロント | 内側への脱落 | フロントをインナーギアに変速し、手でチェーンを掛ける | ロー側リミットスクリューの調整不良 |
フロント | 外側への脱落 | フロントをアウターギアに変速し、手でチェーンを掛ける | トップ側リミットスクリューの調整不良 |
リア | 内側への脱落 | リアディレイラーを操作し、手でチェーンを掛ける | ロー側リミットスクリューの調整不良、ハンガーの曲がり |
リア | 外側への脱落 | リアディレイラーを操作し、手でチェーンを掛ける | トップ側リミットスクリューの調整不良 |
具体的な手順は以下の通りです。まず、リアディレイラーのプーリーケージ(2つの小さな歯車がついている部分)を掴み、自転車の前方に向かってゆっくりと押し込みます。すると、チェーンの張りが緩み、手で簡単に動かせるようになります。
次に、たるんだチェーンを掴み、外れてしまった元のギアに掛け直します。フロントの内側に落ちた場合は小さい方のギア(インナーギア)に、外側に落ちた場合は大きい方のギア(アウターギア)に掛けます。この時、ギアの歯全体にきっちり掛けようとしなくても大丈夫です。上半分くらいが歯に乗っていれば問題ありません。
最後に、チェーンをギアに掛けた状態で、後輪を少し持ち上げ、ペダルをゆっくりと進行方向に回します。すると、チェーンが自然とギア全体に収まっていきます。これで作業は完了です。
内装変速・変速なし(ママチャリ等)の直し方

シティサイクル(ママチャリ)や一部のクロスバイクで採用されている内装変速機や変速なしの自転車は、外装変速機とは直し方が異なります。これらの車種はディレイラーがないため、チェーンをたるませる機構がありません。しかし、手順さえ覚えれば誰でも簡単に対処できます。
まず、チェーンカバーが付いている場合は、プラスドライバーを使ってカバーを固定しているネジを外し、作業スペースを確保します。フルカバータイプで工具がない場合は、無理せず自転車店に持ち込むのが賢明です。
作業の基本は「後ろから前に」です。最初に、後輪のギア(スプロケット)にチェーンが完全にかかっていることを確認します。もし後ろも外れている場合は、まず後ろのギアにチェーンをしっかり掛けてください。
次に、前のギア(チェーンリング)にチェーンを掛けます。この時のポイントは、ギア全体に掛けようとせず、まずギアの下側、全体の4分の1程度の歯にチェーンを引っ掛けることです。チェーンの一部がギアに噛んでいれば十分です。
最後に、チェーンの一部をギアに掛けた状態で、ペダルを「後ろ方向」にゆっくりと回します。ここがロードバイクとの大きな違いです。ママチャリの場合、逆回転させることで、ギアがチェーンを引っ張り上げ、スムーズに全体を巻き込んでくれます。決して進行方向に回さないでください。数回ゆっくり回せば、チェーンは元の位置に綺麗に収まります。作業が終わったら、カバーを元に戻して完了です。
どうしても直らない?頑固なチェーン外れの特殊ケース

通常の手順で試しても、チェーンがフレームとギアの間にがっちりと噛み込んでしまい、手で引き出せない場合があります。特に、リアの外側(最も小さいギアとフレームの間)や、フロントの内側(最も小さいギアとフレーム本体の間)で起こりやすいトラブルです。
このような状況で絶対にやってはいけないのが、力任せにチェーンを引っ張ることです。無理な力を加えると、チェーン自体を傷つけたり、フレームに深い傷を残したりする原因になります。
この頑固なチェーン噛み込みを解決する効果的な方法が、「後輪を緩める」ことです。スポーツバイクの多くは「クイックリリースレバー」という工具不要のレバーで後輪が固定されています。このレバーを解放することで、ホイールが少し動き、フレームとの間に隙間が生まれます。ママチャリの場合は15mmのスパナで車軸のナットを少し緩めます。
ホイールを緩めて隙間ができれば、あれほど頑固に噛み込んでいたチェーンが、驚くほど簡単に取り出せるはずです。チェーンを救出できたら、必ずホイールを元の位置にしっかりと固定し直してください。この時、ホイールがフレームの中央にまっすぐ収まっているか、ブレーキにタイヤが干渉していないかを確認することが非常に重要です。安全に関わる部分なので、作業は慎重に行いましょう。
フレームの傷は大丈夫?チェーン落ち後の点検ポイント

無事にチェーンを直し終えても、安心してはいけません。チェーンが外れた際には、自転車の他の部分にダメージが及んでいる可能性があります。走行を再開する前に、必ずいくつかの点検を行いましょう。
まず確認すべきはフレームの傷です。特にフロントギアの内側にチェーンが落ちた場合、チェーンステー(ペダル付近のフレーム部分)にチェーンが叩きつけられ、塗装が剥げたり、傷が付いたりすることがよくあります。アルミフレームなら多少の傷は問題ありませんが、カーボンフレームの場合は深い傷が構造的なダメージに繋がる可能性もあるため、注意深く確認してください。
次に、リアのスポークです。チェーンがリアの内側(ホイール側)に落ちた場合、スポークに接触して傷をつけたり、最悪の場合は曲げてしまったりすることがあります。指でスポークを一本ずつ弾いてみて、音や感触に異常がないか確認しましょう。
そして最も重要なのが、リアディレイラーとその取り付け部分である「ディレイラーハンガー」の確認です。もし転倒などが原因でチェーンが落ちた場合、このハンガーが曲がっている可能性が高いです。自転車を後ろから見て、ディレイラーが地面に対して垂直にぶら下がっていない場合、ハンガーが曲がっています。曲がったまま走行すると、変速が不調になるだけでなく、再びチェーンが外れる原因となりますので、専門のショップで修正してもらう必要があります。
なぜ自転車のチェーンが外れた?根本原因と再発防止策
- チェーンが外れる5つの主な原因を徹底解剖
- あなたの乗り方が原因かも?変速操作の基本
- 初心者でもできる!チェーン脱落を防ぐ日常メンテナンス
- 走行不能になる前に!チェーン交換のサインと目安
- 備えあれば憂いなし!出先でのトラブル対処用ツール
チェーンが外れる5つの主な原因を徹底解剖
チェーンが外れるトラブルは、単なる不運ではなく、必ず何らかの原因が潜んでいます。その原因を理解することが、再発防止への第一歩です。主な原因は、大きく分けて5つに分類できます。
- ディレイラー(変速機)の調整不良: 特にスポーツバイクで最も多い原因です。ディレイラーには、チェーンの動く範囲を物理的に制限する「リミットスクリュー」というネジがあります。この調整がずれていると、変速時にチェーンが行き過ぎてしまい、ギアの外側や内側に脱落します。
- パーツの摩耗・劣化: チェーンやギアは消耗品です。長期間使用すると、チェーンはピンの部分が摩耗して実質的に「伸びた」状態になります。また、ギアの歯も削れて鋭くなっていきます。こうなるとチェーンとギアの噛み合わせが悪くなり、少しの衝撃や負荷でチェーンが外れやすくなります。
- 不適切な変速操作: 坂道を登っている最中など、ペダルに強い力を込めたまま変速操作を行うと、チェーンに大きな横方向の負荷がかかり、ギアから弾き飛ばされるように外れることがあります。変速は、チェーンに大きな負荷がかかっていないタイミングで行うのが基本です。
- チェーンや駆動系の汚れ: チェーンが泥や古い油で汚れていたり、錆びついていたりすると、リンクの動きが渋くなり、スムーズな変速を妨げます。これが原因でギアに正しく乗らず、脱落に繋がることがあります。
- 物理的なダメージ: 転倒したり、自転車を倒したりした際に、リアディレイラーやディレイラーハンガーが曲がってしまうことがあります。見た目には僅かな曲がりでも、駆動系の精密なアライメントを狂わせ、頻繁なチェーン落ちの原因となります。
これらの原因は一つだけでなく、複数が絡み合って発生することも多いです。頻繁にチェーンが外れる場合は、これらの点を疑ってみましょう。
あなたの乗り方が原因かも?変速操作の基本

自転車のパーツに問題がなくても、乗り方、特に変速の仕方によってはチェーンが外れやすくなります。スムーズでトラブルのない変速操作は、快適なサイクリングの基本技術です。
最も重要なコツは、「変速の瞬間はペダルへの力を抜く」ことです。例えば、これから始まる登り坂に備えてギアを軽くする場合、坂に突入してペダルを強く踏み込みながら変速するのではなく、坂に入る手前の平坦な道で、くるくると軽くペダルを回しているうちに事前に変速を済ませておくのが理想です。変速レバーを操作する一瞬だけ、意識して足の力をフッと抜くようなイメージです。これにより、チェーンは最小限の負荷でスムーズに隣のギアへ移動できます。
また、「クロスチェーン」を避けることも重要です。クロスチェーンとは、フロントギアを一番大きいアウターギアに、リアギアを一番大きいローギア(またはその逆でフロントがインナー、リアがトップ)に入れる組み合わせのことです。この状態ではチェーンが斜めに大きく傾き、チェーンやギアに大きな負担をかけ、駆動効率を落とすだけでなく、チェーンが外れるリスクも高まります。なるべくチェーンがまっすぐに近い状態になるようなギアの組み合わせを意識して使いましょう。
初心者でもできる!チェーン脱落を防ぐ日常メンテナンス
チェーン外れの多くは、日頃の簡単なメンテナンスで予防できます。難しく考える必要はありません。基本は「洗浄」と「注油」の2ステップです。これを定期的に行うだけで、チェーンの寿命を延ばし、トラブルを大幅に減らすことができます。
まずは洗浄です。汚れたチェーンは、性能低下の元です。最も簡単な方法は、乾いた布(ウエス)でチェーンを掴み、ペダルを逆回転させて汚れを拭き取ることです。これだけでも表面の砂やホコリはかなり落ちます。汚れがひどい場合は、自転車用のチェーンクリーナー(ディグリーザー)を吹きかけ、ブラシでこすると内部の頑固な汚れまで落とせます。
洗浄が終わったら注油です。ここで注意したいのは、CRC 5-56のような潤滑・防錆スプレーは使用しないことです。これらは洗浄効果はありますが、自転車のチェーンに必要な潤滑性能を維持できず、すぐに油膜が切れてしまい、かえってチェーンを傷める原因になります。必ず自転車用の「チェーンルブ」や「チェーンオイル」を使いましょう。
注油のコツは、チェーンのコマ(リンク)一つ一つに、内側から一滴ずつ垂らしていくことです。全体に注油し終えたら、余分なオイルを布でしっかりと拭き取ります。表面にオイルがベタベタと残っていると、ホコリを呼び寄せてしまうためです。
走行不能になる前に!チェーン交換のサインと目安
チェーンは自転車のパーツの中でも特に消耗が激しい部品です。どんなに丁寧にメンテナンスをしていても、走行距離が伸びれば必ず寿命を迎えます。劣化したチェーンを使い続けることは、チェーンが外れやすくなるだけでなく、より高価なパーツであるスプロケット(後ろのギア群)やチェーンリング(前のギア)の摩耗を早めてしまうため、経済的にも得策ではありません。
チェーン交換の一般的な目安は、走行距離で3000kmから5000kmと言われていますが、乗り方やメンテナンス頻度によって大きく変わります。より正確に判断するには、「チェーンチェッカー」という専用工具を使うのがおすすめです。この工具をチェーンに当てるだけで、伸び率が0.5%や0.75%に達しているかを簡単に測定でき、交換時期を正確に知ることができます。
工具がない場合でも、交換のサインはいくつかあります。例えば、ペダルを強く踏み込んだ時に「ガクン」とチェーンが歯の上を滑るような感覚(歯飛び)が起きる場合、チェーンかギアのどちらか、あるいは両方がかなり摩耗している証拠です。また、変速の精度が以前より悪くなった、走行中のノイズが大きくなった、といった症状も交換を検討するサインです。定期的にプロの目で見てもらうためにも、年に一度は自転車店で点検を受けることをお勧めします。
備えあれば憂いなし!出先でのトラブル対処用ツール
チェーンが外れるだけでなく、万が一走行中にチェーンが切れてしまった場合、工具がなければその場で走行不能になってしまいます。特に長距離を走るサイクリストにとって、最低限の修理ツールを携帯することは、自分自身を守るための重要な備えです。
必ず携帯したいのが、「チェーンカッター(チェーンツール)」機能付きの携帯マルチツールです。これは、チェーンのピンを押し出してチェーンを切ったり繋いだりするための専用工具です。これがないと、切れたチェーンの修理は不可能です。
そして、チェーンカッターとセットで持っておきたいのが、「コネクティングピン」または「ミッシングリンク(クイックリンク)」と呼ばれる予備の接続部品です。切れたチェーンの破損した部分をチェーンカッターで取り除き、この予備部品を使ってチェーンを再び繋ぎ合わせます。自分の自転車のチェーンの速度(9速、10速など)に合ったものを用意しておく必要があります。
これらの工具に加えて、手が油で真っ黒になるのを防ぐための使い捨てのゴム手袋もサドルバッグに一つ入れておくと、作業が非常に快適になります。これらの備えがあれば、出先でのチェーントラブルにも冷静に対処でき、安心してサイクリングを楽しむことができるでしょう。
総括:自転車のチェーンが外れたトラブルは、原因を知り正しく対処すれば怖くない
この記事のまとめです。
- 自転車のチェーンが外れた際は、まずペダルを止め、安全な場所に移動することが最優先である。
- 無理にペダルを回す行為は、フレームやパーツを傷つけ、事態を悪化させる最大の要因となる。
- 外装変速機付きの自転車は、リアディレイラーを手で押し込みチェーンをたるませてから手で戻すのが基本である。
- ママチャリなど変速機のない自転車は、後輪ギアに掛けた後、前輪ギアの下側に掛け、ペダルを逆回転させてはめる。
- チェーンがフレームとギアの間に固く噛んだ場合は、後輪の固定を少し緩めると隙間ができて取りやすくなる。
- 修理後はフレームの傷、スポークの損傷、ディレイラーハンガーの曲がりがないか点検が必要である。
- チェーンが外れる主な原因は、ディレイラーの調整不良、パーツの摩耗、不適切な変速操作、汚れ、物理的ダメージの5つに大別される。
- ペダルに強い負荷をかけた状態での変速は、チェーン脱落の大きな原因となるため避けるべきである。
- クロスチェーン(チェーンが大きく斜めになるギアの組み合わせ)も、チェーンに負担をかけ、トラブルのリスクを高める。
- 定期的な洗浄と、自転車専用チェーンルブによる注油が、チェーン脱落の最も効果的な予防策である。
- 注油後は、余分なオイルを拭き取ることが、汚れの付着を防ぐ上で重要である。
- チェーンの伸びは専用工具で測定可能であり、定期的な交換が他の高価なパーツを守ることに繋がる。
- ペダルを踏み込んだ際の「歯飛び」は、チェーンやギアが摩耗している明確なサインである。
- 出先でのトラブルに備え、チェーンカッター付きマルチツールと予備の接続部品を携帯することが推奨される。
- 正しい知識と準備があれば、チェーンが外れたというトラブルは冷静に対処可能な問題である。