電動自転車が急に動かなくなったり、パンクしたりすると本当に困りますよね。
「修理はどこに頼めばいいの?」「費用はいくらかかる?」「そもそも自分で直せるものなの?」と不安になる方も多いでしょう。
電動自転車は普通の自転車と違い、バッテリーやモーターといった専門知識が必要な部分も多く、修理のハードルは高く感じられます。
この記事では、電動自転車の修理について、最適な依頼先から大手チェーン店の費用相場、そして「自分で修理できる限界」まで、自転車のエキスパートが徹底的に解説します。
安全に、そして賢く愛車を復活させる方法がわかります。
- 修理の基本は購入店かメーカー正規サービス店
- 後輪パンクなど専門作業は工賃が高額になる傾向
- バッテリーの自己修理は発火の危険があり絶対にNG
- アシスト停止はセンサー清掃で直る可能性あり
電動自転車の修理はどこへ?症状別の最適な依頼先
- 基本は購入店かメーカー正規店
- 大手チェーン店の電動自転車修理費用
- 出張修理は可能?ブリヂストンの例
- 修理を断られる?型式認定(TSマーク)の重要性
基本は購入店かメーカー正規店

電動自転車が故障した時、真っ先に相談すべきなのは「その自転車を購入したお店」です。これが修理の基本であり、鉄則と言えます。
なぜなら、電動自転車は単なる自転車ではなく、複雑な電気系統(ドライブユニット、バッテリー、各種センサー)を持つ「電化製品」の側面が強いからです。修理には専門的な知識や、時にはメーカー専用の診断機器が必要になるため、どこでも直せるわけではありません。
ヤマハやブリヂストンといった国内大手メーカーも、修理の際は公式に認定した販売店での対応を強く推奨しています。例えば、ヤマハは「PASサービスパートナー店」、ブリヂストンは「修理サポート店」という正規のアフターサービス窓口を全国に設けています。これらの店舗では、メーカーの専門研修を受けた技術者が、確実な純正部品を使って診断と修理を行ってくれるため、最も安心できる選択肢です。
メーカーの公式サイトを見ても、サポートページではDIYの方法を案内するより先に、まず「販売店検索」へ誘導しています 1。これは、電動自転車の修理が「プロに任せること」を大前提に設計されている何よりの証拠です。もちろん、近所の自転車店でも修理を受けてくれる場所はありますが、その場合も、あなたの愛車と同じメーカーの正規取扱店であるかを確認してから依頼するのが賢明でしょう。
大手チェーン店の電動自転車修理費用

電動自転車の修理をプロに依頼すると、費用は一体いくらくらいかかるのでしょうか。
もしかすると「一般の自転車より修理代が高い」と感じたことがあるかもしれません。それには明確な理由があります。電動自転車は、モーターや配線の取り外し・再接続など、一般の自転車にはない専門的な作業が発生します。そのため、多くの販売店では一般車とは別に「電動アシスト自転車専用の工賃」が設定されているのです。
例えば、大手自転車チェーン店のサイクルベースあさひでは、「E-バイクコーナー」を設置している店舗もあり 6、電動アシスト自転車専用の修理工賃がウェブサイトで公開されています。
以下は、その工賃の一例です(すべて作業工賃のみ、部品代は別途かかります)。
| 修理項目 | 基本工賃(税込目安) | 備考 |
| タイヤ・チューブ交換(後輪モーター式) | 約5,300円 | モーターの配線着脱作業を含む |
| タイヤ・チューブ交換(前輪モーター式) | 約4,000円 | モーターの配線着脱作業を含む |
| スピードセンサー交換 | 2,420円 | |
| メインスイッチ交換 | 4,180円 | |
| モーターユニット全交換 | 9,900円 |
このように、特にモーターが組み込まれている後輪のパンク修理は、一般の自転車に比べて工賃が高額になることが分かります。これは、配線の扱いや複雑な作業に対する専門技術料であり、適正な価格設定と言えます。
修理に出す際は、後から驚くことがないよう、作業前に必ず見積もりをもらって総額を確認するようにしましょう。
出張修理は可能?ブリヂストンの例

「電動自転車が故障したけれど、車体が重すぎてお店まで運べない…」これは、電動自転車オーナーならではの深刻な悩みです。そんな時に頼りになるのが「出張修理サービス」です。
ただし、この出張修理は、どの自転車店でも標準サービスとして無料で受けられるわけではありません。利用にはいくつかのパターンがあります。
ブリヂストンサイクルの例を見てみましょう。
一つ目のパターンは、新車購入時の保証や、有料の会員サービス(サブスクリプション)として提供されるケースです。例えば「ご購入日より年3回まで出張修理が無料」といった特典が、購入プランに最初から含まれている場合があります 7。まずはご自身の保証書や購入時の契約内容を今一度確認してみてください。
二つ目のパターンは、地域の「修理サポート店」が、店舗独自の有料サービスとして個別に対応してくれるケースです。これはあくまで店舗ごとのオプションサービスであり、すべての店舗が対応しているとは限りません。ブリヂストンの公式サイトでも、「出張対応ができる場合がありますが、出張に伴い費用が発生します」と案内されています。
もし出張修理を利用したい場合は、まず最寄りの正規販売店に電話をかけ、「出張修理は可能か」「自宅まで来てもらう場合の出張費用はいくらかかるか」を事前に必ず確認することが重要です。
修理を断られる?型式認定(TSマーク)の重要性

意を決して自転車店に修理に持ち込んだにもかかわらず、「申し訳ありませんが、うちでは修理できません」と断られてしまった…。そんな経験はありませんか?
その理由は、メカニックの技術が足りないからではなく、その自転車が抱える「法律的な問題」にあるかもしれません。
日本国内で「電動アシスト自転車」として公道を安全に走行するためには、国が定めた厳格な安全基準(アシスト比率が時速24kmでゼロになる、など)を満たしている必要があります。この基準を満たしていることの証明が、国家公安委員会の「型式認定」であり、認定を受けた自転車には「TSマーク」が貼付されています。
ところが、特にインターネット通販などで安価に販売されている海外製のノーブランド電動自転車の中には、この型式認定を受けていないものが紛れ込んでいます。
これらは、アシスト力が強すぎて原付バイク扱いになったり、そもそも日本の法律では「自転車」として認められない可能性があります。
正規の販売店や大手チェーン店は、こうした法律に適合しているか不明な自転車を整備・修理することで、万が一その自転車が事故を起こした際の責任を問われることを非常に恐れます。
そのため、型式認定を受けていない自転車や、違法な改造(スピードリミッターの解除など)が疑われる自転車の修理は、安全とコンプライアンスの観点から、断らざるを得ないのです。
電動自転車の修理費用と自分で直せる限界
- バッテリー修理は危険!交換費用と寿命
- アシストしない原因:スイッチとセンサー
- 自分でできる?後輪パンク修理の手順
- 自分でできる?チェーンとブレーキの交換
バッテリー修理は危険!交換費用と寿命

電動自転車の心臓部であり、最も高価なパーツであるバッテリー。「最近、バッテリーの減りが早くなった」と感じたとき、「なんとか自分で修理できないか?」と考えるかもしれません。
しかし、結論から申し上げます。バッテリーの自己修理は、絶対にやめてください。
パナソニックをはじめとする国内メーカーは、バッテリーの分解・改造を「危険」レベルの行為として厳しく禁止しています。リチウムイオンバッテリーは高電圧のエネルギーの塊であり、内部は精密な電子回路で制御されています。知識のない素人が手を出すと、内部でショートを起こし、「発熱・発火」といった命に関わる重大な事故につながる恐れが極めて高いのです 11。これはプロに任せるべき修理の代表例です。
そもそもバッテリーは「消耗品」であり、修理して性能を回復させるものではありません。使い方にもよりますが、約3年程度で容量が半分以下になることもあり、性能が落ちたら「交換」するのが基本です。
交換費用はメーカーや容量によって幅がありますが、新品で3万円~5万円程度 12 が相場です。非常に高額ですが、安全に乗り続けるためのコストと考える必要があります。
唯一、ご自身で試せることがあるとすれば、充電器のエラーランプの確認です。例えば「ランプが1灯目と3灯目、2灯目と4灯目が交互に点滅」している場合、バッテリー本体ではなく「接続端子の接触不良」が原因かもしれません。この場合、電源を切り、端子部分を乾いた布で優しく清掃すると改善する可能性があります。
ただし、これで改善しない場合はバッテリー本体か充電器の故障であり、メーカーも「修理はできません」と明言しています 14。迷わず販売店で診断を受け、交換を検討してください。
アシストしない原因:スイッチとセンサー

ペダルを漕いでいるのに、急にアシストが「スッ」と効かなくなる…。これは電動自転車で最も焦るトラブルの一つです。モーターが壊れたかと不安になりますが、原因はいくつか考えられます。
まず、考えられるのは電気系統の故障です。手元にある電源の「メインスイッチ」や、フレーム内部に収められた「コントローラー(制御基板)」、またはそれらをつなぐ「配線」の故障や断線です。
これは電気系統の専門的な修理となり、費用も高額になりがちです。部品代だけでスイッチが1万円~1万5千円、コントローラーなら2万円~4万円にのぼることもあります。もちろん、これに加えて専門的な交換工賃(スイッチ交換で約4千円など 6)もかかります。この場合は、ご自身でどうにかしようとせず、迷わずプロに任せましょう。
しかし、高額な修理を依頼する前に、ぜひご自身で5分だけ確認してほしい場所があります。
それは、ペダルの根元(クランク部分)にある「スピードセンサー」です。
多くの電動自転車は、ここに「感知盤」と呼ばれるマグネットが付いた円盤が設置されています。これが回転することで、「今、ペダルを漕いでいる」という信号をモーターに送っているのです。
この感知盤とセンサーの隙間が、泥汚れで詰まったり、何かの衝撃でズレて規定の距離(通常3mm以内)より離れてしまったりすると、信号が途絶え、アシストが停止してしまうのです。
対処は簡単です。まず安全のために電源を切り、バッテリーを車体から抜き取ってください。その上で、感知盤とセンサー周辺をきれいに清掃し、隙間が空きすぎていないか確認・調整します。
もしこれでアシストが復活すれば、数万円の修理代が浮くかもしれません。試してみる価値は十分にあります。
自分でできる?後輪パンク修理の手順

電動自転車の修理において、DIYで挑戦するかプロに任せるか、最も悩ましいのが「後輪のパンク修理」でしょう。
前述の通り、モーターが組み込まれた後輪のパンク修理は非常に専門性が高く、大手自転車店で依頼すると工賃だけで5,000円近くなることもあります。この高額な費用を前に、「なんとか自分で挑戦したい」と思う方も多いはずです。
結論から言えば、適切な工具(18mmのレンチなど 17)と正しい知識さえあれば、後輪のパンク修理もDIYは可能です。
ただし、普通の自転車のパンク修理 19 とは決定的に異なる、最も重要な作業が一つ加わります。それは「モーターケーブルの切り離し」です。
後輪の車軸(ハブ)からは、モーターを動かすための太い電線が伸びています。車輪をフレームから外すには、まずこのケーブルをたどり、フレームの途中に設けられた防水コネクタ(接続カプラー)を見つけて、慎重に引き抜く必要があります。
大まかな手順は以下の通りです。
- 安全のため、必ず電源をOFFにし、バッテリーを車体から取り外します。
- 後輪ハブから伸びるモーターケーブルをたどり、フレームの途中にある接続コネクタを(爪を押しながら、あるいは回しながら)外します。
- ケーブルをフレームに固定している結束バンド(タイラップ)をニッパーなどで切断します。
- 18mmなどの大きなレンチでアクスルナットを緩め、ケーブルやコネクタを傷つけないよう、ゆっくりと後輪をフレームから外します。
- ここまで来れば、あとは普通の自転車と同じタイヤ・チューブ交換作業です。
- 修理後、逆の手順で組み付け、コネクタは「カチッ」と音がするまで確実に差し込み、新しい結束バンドでケーブルをフレームに固定し直します。
この「コネクタの脱着」という電装品ならではの作業に自信が持てるかどうかが、DIYで挑戦するか、プロに工賃を払うかの大きな分かれ道となります。
自分でできる?チェーンとブレーキの交換
バッテリーやモーターケーブルの話が続いたため、「電動自転車の修理は、すべてが専門的で難しい」と感じてしまったかもしれません。
しかし、そんなことはありません。電気系統が直接絡まない「機械部品」の多くは、私たちが慣れ親しんだ一般の自転車とまったく同じように自分でメンテナンスできます。
その代表例が、チェーンとブレーキです。
チェーンは、走行距離が伸びれば必ず交換が必要になる消耗品です。電動自転車はパワーが強いため、チェーンにも負荷がかかりやすいと言えます。この交換作業は、専用の「チェーンカッター」という工具さえあれば、DIYで十分可能です。古いチェーンをカットして外し、新しいチェーンを同じ長さ(コマ数)に調整して取り付けるだけです 22。作業自体は一般車と何ら変わりません。
ブレーキも同様です。電動自転車は車体重量が重く、スピードも出やすいため、ブレーキパッド(ブレーキシュー)の減りが早い傾向にあります。安全に直結する重要なパーツなので、定期的な点検と交換が欠かせません。
このブレーキシューの交換も、レンチとプライヤーがあれば自分でできます。作業の唯一のコツは、新しいブレーキシューを取り付ける際に、進行方向を示す「矢印」や「向き(R/Lなど)」を間違えないこと。これさえ守れば、決して難しい作業ではありません。
「電気系はプロに、機械系は自分で」と賢く切り分けて考えることで、電動自転車のメンテナンスはもっと身近なものになり、愛車への理解も深まるはずです。
総括:電動自転車の修理は「プロへの依頼」と「安全なDIY」の賢い見極めが肝心
この記事のまとめです。
- 電動自転車の修理は、まず購入店かメーカー認定の正規販売店に相談することが基本である。
- ヤマハは「PASサービスパートナー店」、ブリヂストンは「修理サポート店」など、メーカー独自のサービス網を設けている。
- 電動自転車の修理には専門知識と工具が必要なため、工賃は一般の自転車より高額に設定されている。
- 大手チェーン店では、後輪(モーター付)のパンク修理工賃が5,000円程度になることもある。
- 重くて運べない場合、出張修理サービスが利用できる可能性があるが、有料か購入時特典の場合が多いため事前確認が必要である。
- 警察庁の「型式認定(TSマーク)」を受けていない違法な電動自転車は、正規店で修理を断られる可能性が極めて高い。
- 心臓部であるリチウムイオンバッテリーの分解・改造は、発熱・発火の危険があるため絶対に禁止されている。
- バッテリーは消耗品であり、修理ではなく交換が基本である。交換費用は3万円~5万円が目安となる。
- バッテリーエラーの一部(特定パターンの点滅)は、端子の清掃で改善する場合がある。
- アシストが効かない原因には、高額なスイッチやコントローラーの故障と、安価に直せるセンサー不具合の二種類がある。
- 修理に出す前に、ペダル根元のスピードセンサーの汚れやズレ(適正3mm以内)を自分で確認する価値がある。
- 後輪のパンク修理を自分で行う最大の難関は、モーターケーブルのコネクタを安全に脱着することである。
- 後輪のDIY修理は、高額な工賃を節約できるメリットと、配線を破損させるリスクを天秤にかける必要がある。
- チェーン交換やブレーキシュー交換など、電気系統が絡まない「機械部品」の修理は、一般の自転車と同様にDIYが可能である。
- 電動自転車の修理は、「電気系=プロ」「機械系=DIY可能」と切り分けて考えることが賢明である。

