自転車に乗っていると、ペダルがガタガタしたり、「カコンカコン」「パキパキ」といった異音が聞こえたりして、不安に感じたことはありませんか?
ペダルを踏むと力が逃げるような感覚や、クランクが左右に動く感じがすると、何が原因なのか、修理費用はいくらかかるのか気になりますよね。
実はその症状、ペダル本体ではなく、もっと中心部のパーツに問題があるかもしれません。
この記事では、自転車安全整備士の知見を基に、ペダルのガタガタや異音の主な原因から、ご自身でできるチェック方法、そして修理に出した場合の費用相場まで、詳しく解説していきます。
- ペダルのガタつきはBB(ボトムブラケット)の緩みが主な原因
- 自分でできる簡単な原因特定チェックリスト
- 修理にかかる費用の目安(調整から交換まで)
- 放置するリスクと定期的なメンテナンスの重要性
自転車のペダルがガタガタする原因は?異音の正体を突き止めよう
- ペダルがガタガタする主な原因はBBの緩み
- ペダル本体が原因でガタつくケースとは?
- 漕ぐと「パキパキ」「カチカチ」異音がするのはなぜ?
- 後輪のガタつきがペダルに影響することも?
ペダルがガタガタする主な原因はBBの緩み

自転車のペダルがガタガタする、と聞いて多くの方がペダル自体を疑いますが、結論から言うと「ボトムブラケット(BB)」の緩みが原因である可能性が非常に高いです。BBとは、クランク(ペダルの棒)の回転軸を支える、フレームの中心部に入っている重要なパーツです。この部品があるおかげで、私たちはペダルを滑らかに漕ぐことができるんですね。
では、なぜBBが緩むのでしょうか。BBの内部にはベアリングが入っており、グリスで潤滑されています。長期間使用するうちに、このグリスが減ったり、ベアリングが摩耗してすり減ったりすることで、内部に隙間が生まれてしまうのです。この隙間が、ペダル(クランク)のガタつきとして現れるわけです。
ご自身で原因を確かめる簡単な方法があります。左側のクランク(ペダルの付いている棒)をしっかりと握り、前後に動かしてみてください。横方向ではなく、奥に押したり手前に引いたりする動きです。このとき、少しでも「ガタッ」と感じるなら、BBの緩みが原因である可能性が極めて高いと言えるでしょう。このチェックは、クランクを少しずつ回転させ、12時、3時、6時、9時の方向など、様々な位置で試すのがポイントです。特定の位置だけでガタつきが出ることがあるからです。
ペダル本体が原因でガタつくケースとは?

BB(ボトムブラケット)のトラブルがガタつきの主な原因ですが、もちろん例外もあります。クランクを手で動かしても特に異常が感じられない場合、次に考えられるのは「ペダル本体の破損」です。
実はペダルの中にも、BBと同じように回転を滑らかにするためのベアリングが入っています。この内部のベアリング球が割れてしまったり、摩耗したりすると、ペダルを漕いだ時に「ガタガタ」とした感触や異音が発生することがあります。
また、ペダルの寿命も考慮すべき点です。ペダルの寿命は走行距離にして約30,000〜50,000kmとされていますが、これはあくまで目安です。転倒した回数が多いと、その分ペダルは地面と衝突して大きな衝撃を受けているため、寿命は縮まりやすくなります。衝撃でペダル軸が歪んだり、内部のベアリングが損傷したりすることも、ガタつきの原因となり得ます。
ただし、自転車整備の現場での経験上、ペダル本体が原因でガタつくケースは、BBのトラブルに比べてそれほど多くはない印象です。まずはBBの緩みを疑い、それでも原因が特定できない場合にペダル本体の故障を考える、という順番でチェックしていくのが良いでしょう。
漕ぐと「パキパキ」「カチカチ」異音がするのはなぜ?

ペダルを踏み込むたびに聞こえる「パキパキ」「カチカチ」といった不快な音。これもまた、自転車からの重要なサインです。異音はフレームを伝わって響くため、発生源を特定するのは少し難しいのですが、主な原因はやはりBBやクランク周辺に集中しています。
最も一般的な原因は、BBの緩みや劣化、グリス切れです。力がかかった瞬間に、わずかな隙間で部品がきしむことで「パキパキ」という音が発生します。特に、立ち漕ぎ(ダンシング)をした時だけ音が鳴る場合は、より大きな力がかかることで症状が顕著になっていると考えられます。
また、クランクの緩みも「カチッ」「パキッ」という音の原因になります。クランクを固定しているボルトの締め付けトルクが不足していると、踏み込んだ瞬間にクランクが微かに動き、音を発生させるのです。
さらに、ペダルとクランクの取り付け部分も異音の原因となり得ます。ペダルのネジ山に塗布されているグリスが切れたり、汚れや砂などが入り込んだりすると、力がかかるたびに金属同士がこすれて「キュッキュッ」という音や「パキパキ」音が出ることがあります。
これらの異音は、単に不快なだけでなく、部品が正しく機能していない証拠です。放置すれば、より大きなトラブルにつながる可能性もあるため、早めの対処が大切です。
後輪のガタつきがペダルに影響することも?

「ペダルを漕ぐとガタガタする」という症状があるものの、BBやクランクをチェックしても異常が見つからない…。そんな時は、少し視点を変えて後輪の状態を確認してみるのも一つの手です。
自転車は多くのパーツが連動して動いているため、一見関係なさそうな場所の不具合が、ペダルを漕ぐ感覚に影響を与えることがあります。例えば、後輪のハブ軸を固定しているロックナットが緩んでいると、ホイール全体が左右にわずかに動くようになります。この状態でペダルを漕ぐと、チェーンを通じて駆動力が伝わる際に車体が不安定になり、それが「ガタつき」として感じられることがあるのです。
また、後輪ハブの内部にあるベアリングの摩耗やグリス切れも、漕いだ時の異音や振動の原因となります。ペダルを漕いでいるときだけ「ガタガタ」と音がする場合、チェーンやスプロケット(後輪のギア)、そしてハブ内部の不具合が原因である可能性も考えられます。
後輪がガタつく原因は、ナットの緩みだけでなく、ハブシャフトの歪み、リムの曲がり、スポークの緩みなど多岐にわたります。もし、ペダル周りと一緒に後輪にもグラつきを感じる場合は、後輪のトラブルが根本的な原因かもしれません。安全に関わる重要な部分ですので、少しでもおかしいと感じたら、専門の自転車店で見てもらうことを強くお勧めします。
自転車のペダルがガタガタするときの修理と費用について
- ペダル軸やクランクの締め方と注意点
- BBの緩み調整や交換にかかる修理費用
- ペダルの寿命と交換のタイミングは?
- ガタつきを放置するとどうなる?定期メンテナンスの重要性
ペダル軸やクランクの締め方と注意点
ペダルのガタつきや異音の原因が、部品の緩みである場合、締め直すことで改善することがあります。ただし、正しい工具と手順で行わないと、かえって部品を傷つけてしまう可能性があるので注意が必要です。
まず、ペダルの取り付けですが、左右でネジの回す方向が違うことを覚えておきましょう。右ペダルは時計回り(右回り)で締まり、左ペダルは反時計回り(左回り)で締まります(逆ネジ)。間違えて無理に力を加えると、クランク側のネジ山を壊してしまうので絶対にやめましょう。取り付ける際は、最初に工具を使わず手で締められるところまで締め込み、ネジが斜めに入っていないことを確認するのがコツです。
次にクランクですが、ここを固定しているボルトの緩みもガタつきの原因になります。クランクの締め付けには「トルクレンチ」という専用工具で、メーカーが指定する規定のトルク(回転力)で締め付けることが非常に重要です。締め付けが弱いと緩みの原因になりますし、逆に強すぎると部品を破損させてしまいます。ママチャリの場合、12mmのナットで30-40Nm程度が目安とされていますが、車種によって異なるため、自信がない場合は専門店に任せるのが賢明です。
これらの作業にはペダルレンチやクランク抜き工具といった専用工具が必要になることが多く、一般家庭にある工具で対応するのは難しい場合があります。
BBの緩み調整や交換にかかる修理費用
自転車のボトムブラケットの修理(ベアリング交換とグリスアップ)
— まさクン (@0bFRLADUV5pH0r2) September 7, 2025
初めてやって見た。
自転車屋さんだと8000円位だって言ってたので今日は今夜は8000円分呑めます😆🍻 pic.twitter.com/UdgnMCyNtq
ペダルのガタつきの主な原因であるBB(ボトムブラケット)の修理費用は、症状の程度によって大きく変わります。
幸いなことに、BBの緩みは「調整」で直ることが多いです。この場合、専用の工具を使って締め直す作業となり、修理工賃の相場は1,000円から1,500円程度です。作業時間も5分から10分ほどで終わることがほとんどなので、比較的気軽に依頼できますね。
しかし、調整だけでは済まないケースもあります。それは、ガタつきの原因が「BB本体の破損」や「寿命」によるものだった場合です。内部のベアリングやその受け皿(リテーナー)がバラバラに壊れているような状態だと、BB本体を丸ごと交換する必要があります。
BBの交換となると、修理費用は一気に高くなります。パーツ代と工賃を合わせて5,000円から8,000円程度になることも珍しくありません。なぜこんなに高くなるかというと、BBを交換するためには、クランクやチェーンケースといった周辺のパーツを一度すべて取り外さなければならず、作業に非常に時間がかかるからです。この場合、自転車を数日間預けることになる可能性が高いので、時間に余裕をもってお店に相談しましょう。
まずは自転車店で状態を見てもらい、調整で済むのか、それとも交換が必要なのかを診断してもらうのが一番です。
ペダルの寿命と交換のタイミングは?
毎日使う自転車のペダルにも、もちろん寿命があります。安全で快適に乗り続けるためには、適切なタイミングで交換を検討することが大切です。
ペダルの寿命は、走行距離に換算すると約30,000〜50,000kmがひとつの目安とされています。しかし、これはあくまで一般的な数値であり、使い方によって大きく変わってきます。例えば、坂道が多くてペダルに大きな負荷をかける乗り方をしていたり、転倒してペダルを地面にぶつけたりした経験が多いと、寿命はそれだけ短くなります。
交換を考えるべきサインとしては、以下のような症状が挙げられます。
- ペダルに明らかなガタつきがある
- 漕いだ時に「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」といった異音がする
- ペダルの回転が明らかに渋い、またはスムーズではない
- 転倒による大きな傷やひび割れがある
- ペダルの踏み面がすり減って滑りやすくなっている
特に、ペダル内部のベアリングが摩耗したり破損したりすると、ガタつきや異音の原因になります。グリスアップなどのメンテナンスで改善することもありますが、ガタつきが解消しない場合はペダル自体の交換が必要です。ペダルの交換は、部品代を含めても2,000円程度から可能なので、異常を感じたら早めに交換を検討するのが良いでしょう。
ガタつきを放置するとどうなる?定期メンテナンスの重要性
ペダルやクランクのガタつきを「まだ乗れるから」と放置してしまうと、さまざまなリスクが生じます。ガタガタした状態を放っておくと、状況はより悪くなる未来しかありません。
まず、安全性の問題です。ガタつきがある状態で乗り続けると、走行が不安定になり、思わぬ事故につながる可能性があります。最悪の場合、走行中にクランクが外れてしまうといった重大なトラブルを引き起こすことも考えられます。
次に、自転車へのダメージ拡大です。BBやクランクの緩みは、放置することでフレーム側にまでダメージを与えてしまうことがあります。最初は簡単な調整で済んだはずの不具合が、BB本体の交換、さらにはフレームの修理が必要になるような、高額な修理につながりかねません。異音やガタつきは、自転車からのSOSサインと捉えるべきです。
こうした事態を防ぐために、定期的なメンテナンスが非常に重要になります。月に1〜2回はペダルやクランクの状態をご自身でチェックし、半年に1回はグリスアップを行うのが理想的です。また、屋外で自転車を保管していると、雨や湿気でサビが発生しやすくなり、パーツの劣化を早めてしまいます。できるだけ屋内で保管することも、自転車を長持ちさせる秘訣です。
異常を感じた時点で速やかに自転車店へ行き、点検・修理をしてもらうことが、結果的に安全を守り、余計な出費を抑えることにつながるのです。
総括:自転車のペダルがガタガタする症状は、早めの点検で安全と快適さを取り戻しましょう
この記事のまとめです。
- 自転車のペダルがガタガタする主な原因は「ボトムブラケット(BB)」の緩みである可能性が高い
- BBとはクランクの回転を支えるフレーム内部のパーツ
- ガタつきの確認は、クランクを握って前後に動かしてみることで可能
- BBの緩みはベアリングの摩耗やグリス切れによって内部に隙間が生じることが原因
- 例外としてペダル本体のベアリング破損がガタつきの原因になることもある
- 漕いだ時の「パキパキ」「カチカチ」という異音もBBやクランクの緩みが原因であることが多い
- ペダルとクランクの取り付け部分のグリス切れや汚れも異音の原因となり得る
- 後輪ハブのナット緩みやベアリングの不具合がペダルの感覚に影響することもある
- BBの緩みは調整で直ることが多く、修理費用は1,000円~1,500円程度が相場
- BB本体が破損している場合は交換が必要で、費用は5,000円~8,000円程度になる
- BB交換は作業が複雑なため工賃が高くなる傾向がある
- ペダルの寿命は走行距離約30,000~50,000kmが目安だが、転倒回数などでも縮まる
- クランクボルトの締め付けには規定のトルク管理が重要である
- ガタつきを放置すると、より大きな故障や事故につながる危険性がある
- 定期的な点検やメンテナンスが自転車の寿命を延ばし、安全性を保つ鍵である