自転車ハブ交換の費用とやり方|自分でやる難易度も解説

自転車のホイールから「ゴリゴリ」「ガタガタ」といった異音や不調を感じていませんか?その原因は、走行性能の心臓部であるハブにあるかもしれません

「自転車ハブ交換」と検索したあなたは、その費用や自分で修理できるのか、具体的な手順を知りたいと思っているはずです。

この記事では、不調のサインの見分け方から、プロに頼む料金の相場、DIYの難易度とリスクまで詳しく解説。

さらに、ハブの種類に応じた工具の選び方や、シマノ製ハブの重要な注意点、そして分解からグリスアップ、最重要工程である玉当たり調整に至るまで、交換前に知るべき全知識を網羅しています。

この記事のポイント
  • ハブの不調サインと原因の特定方法
  • プロに頼む費用と自分でやる難易度の比較
  • 失敗しないハブの種類と工具の選び方
  • 分解からグリスアップ、玉当たり調整までの全手順
  • 自転車ハブ交換の前に知るべき基礎知識
目次

自転車ハブ交換の前に知るべき基礎知識

  • その異音やガタ、本当にハブが原因?不調のサインと見分け方
  • 自転車ハブ交換の費用はいくら?プロに頼む料金の相場
  • 自分でやる?お店に任せる?ハブ交換の難易度とリスク
  • ハブの種類で作業は変わる!カップ&コーン式とシールドベアリング
  • シマノ製ハブの交換で知っておくべき重要な注意点

その異音やガタ、本当にハブが原因?不調のサインと見分け方

その異音やガタ、本当にハブが原因?不調のサインと見分け方

ホイールを空転させた際に「ゴリゴリ」「コロコロ」といった抵抗感のある異音や振動、またホイールを左右に揺すったときの「ガタガタ」という動きは、ハブに問題がある代表的なサインです。これらの症状は、内部のベアリングの摩耗や損傷、グリス切れ、調整の緩みなど、様々な原因によって引き起こされます。

しかし、これらの症状がすぐにハブ交換が必要というわけではありません。まずは、不調の原因が本当にハブにあるのかを正確に突き止めることが重要です。最も簡単な診断方法は、自転車からホイールを取り外し、片手でハブ軸(シャフト)を持ち、もう一方の手でホイールをゆっくりと回してみることです。このとき、指先に「ゴリゴリ」とした感触が伝わるなら、内部のベアリングやそれを受ける部分(レース)に問題がある可能性が高いでしょう。

併せて、ハブ軸を掴んだままホイールを上下左右に揺すり、ガタつきがないかも確認します。もし、わずかなガタつきがあるだけなら、後述する「玉当たり調整」という作業で解消できる場合がほとんどです。安易に交換と判断する前に、この一手間で正確な診断を心がけることが、不要な出費と手間を防ぐ最初のステップになります。

自転車ハブ交換の費用はいくら?プロに頼む料金の相場

自転車のハブ交換やメンテナンスをプロのショップに依頼した場合の費用は、作業の複雑さによって大きく変動します。簡単な調整からホイール全体の組み換えまで、その内容は多岐にわたるためです。一般的な料金の目安を下の表にまとめました。

作業内容一般車スポーツ車備考
玉当たり調整1,650円~1,500円~ホイールの脱着がない場合の簡易調整料金
前輪ハブオーバーホール3,000円~4,500円~部品代は別途。分解、洗浄、グリスアップ
後輪ハブオーバーホール4,500円~6,800円~スプロケット脱着工賃を含むため高め
カートリッジベアリング交換6,000円~ (片側)部品代別途。圧入工具が必要な作業
ハブ本体交換 (ホイール組み換え)8,000円~11,000円~ハブ本体、スポーク、ニップル代は別途

表からわかるように、後輪はギアであるスプロケットの脱着作業が伴うため、前輪よりも工賃が高くなる傾向にあります。また、最も安価な「玉当たり調整」で済むのか、分解・洗浄を行う「オーバーホール」か、ベアリングやハブ本体の交換が必要かによって、費用は数千円から1万円を超えることまであります。

特にハブ本体を交換する場合は、リムとハブを繋ぐスポークをすべて解き、新しいハブでホイールを組み直す「ホイール組み換え」という大掛かりな作業が必要です。この工賃に加えてハブ本体やスポークなどの部品代も発生します。正確な診断が費用を抑える鍵であることが、ここからもわかります。

自分でやる?お店に任せる?ハブ交換の難易度とリスク

自分でやる?お店に任せる?ハブ交換の難易度とリスク

費用を抑えるためにDIYを検討する方も多いでしょう。しかし、ハブのメンテナンスには相応の知識と技術、そして専用工具が不可欠です。その難易度は、ハブの種類と作業内容によって大きく異なります。

比較的挑戦しやすいのは、シマノ製のハブなどに多い「カップ&コーン式」のオーバーホールです。これはハブを分解し、洗浄して新しいグリスを詰めて組み直す作業で、手順をしっかり学べば初心者でも対応可能です。

一方で、難易度が高いのは「シールドベアリング」の交換や、ハブ本体を交換するための「ホイール組み換え」です。特にシールドベアリングの交換には、ベアリングをハブ本体から叩き出したり、正確に圧入したりするための専用工具(ベアリングプーラーやプレス機)が不可欠であり、これらは高価なものが少なくありません。

DIYにおける最大のリスクは、不適切な作業による部品の破損と、それに伴う安全性の低下です。特に、最終工程である「玉当たり調整」は非常に繊細で、締め付けが強すぎると回転が重くなりベアリングを早期に傷つけ、弱すぎるとガタつきが残って走行中に危険を伴う可能性もあります。工具への初期投資と作業のリスクを天秤にかけ、自身のスキルを冷静に見極めた上で判断することが賢明です。

ハブの種類で作業は変わる!カップ&コーン式とシールドベアリング

自転車のハブに使われるベアリング構造は、大きく分けて「カップ&コーン式」と「シールドベアリング式」の2種類です。どちらのタイプかによってメンテナンス方法や必要な工具が全く異なるため、自分の自転車のハブを把握しておくことが非常に重要です。

カップ&コーン式

古くからある伝統的な構造で、特にシマノ製のハブの多くに採用されています。ハブ本体に「カップ(ワン)」という受け皿があり、そこに鋼球(ボールベアリング)を入れ、「コーン(玉押し)」という部品で締め付け具合を調整する仕組みです。このタイプの最大の利点は、分解・洗浄・グリスアップといった定期的なメンテナンスが可能で、調整によって回転性能を維持しやすい点です。一方、調整が繊細なことと、構造的に水や汚れが侵入しやすいという弱点もあります。

シールドベアリング式

「カートリッジベアリング」とも呼ばれ、多くの海外ブランド製ハブや比較的新しいモデルに採用されています。ベアリングがシール付きの一体型ユニット(カートリッジ)になっており、高い密閉性から水や汚れに強く、メンテナンスフリーで長期間スムーズな回転を維持できるのが利点です。しかし、ベアリング自体は分解できないため、不調になった場合はユニットごと交換する必要があり、その際にはベアリングを打ち抜いたり圧入したりするための専用工具が必須となります。

シマノ製ハブの交換で知っておくべき重要な注意点

シマノ製ハブの交換で知っておくべき重要な注意点

国内で最も普及しているシマノ製のハブは、そのほとんどがメンテナンス性に優れたカップ&コーン式を採用しています。ハブ軸やベアリング、玉押し(コーン)といった消耗部品は補修パーツとして供給されており、これらを交換することで長期間にわたり性能を維持できるのが魅力です。

しかし、シマノ製ハブには一つ、非常に重要な注意点が存在します。それは、ハブ本体(ハブシェル)に圧入されている「カップ(ワン)」、つまりベアリングの球を受けるお皿の部分が、原則として補修パーツとして供給されていないことです。

これは何を意味するのか。もし長年の使用やグリス切れによって、カップの表面に虫食いのような点状の傷(ピッティング)や摩耗が発生してしまった場合、そのハブは実質的に寿命を迎えたことになります。たとえベアリングやコーンを新品に交換しても、受け皿であるカップが傷んでいては、滑らかな回転は二度と戻ってきません。

この状態になると、解決策はハブ本体を丸ごと交換する「ホイールの組み換え」しか残されていません。「カップの傷は致命傷」という事実を念頭に置き、手遅れになる前に定期的なグリスアップを行うことが、シマノ製ハブを長く使い続ける上で何よりも大切なのです。

プロが教える実践編!自転車ハブ交換の作業手順と工具

  • これだけは揃えたい!自転車ハブ交換に必要な工具リスト
  • 【手順1】後輪の外し方とスプロケットの取り外し
  • 【手順2】ハブの分解と洗浄、グリスアップのコツ
  • 【手順3】最重要工程!ハブの組み立てと玉当たり調整

これだけは揃えたい!自転車ハブ交換に必要な工具リスト

自転車ハブのメンテナンスを自分で行うには、専用の工具が不可欠です。ここでは、カップ&コーン式のオーバーホールを中心に、作業レベルに応じて必要な工具をリストアップしました。

レベル工具目的
基本 (オーバーホール必須)ハブコンレンチ (ハブスパナ)玉押しとロックナットの固定・調整に使います。非常に薄いスパナで、ハブのモデルに合ったサイズ (13mm, 15mm, 17mmなど) が必要です。
モンキーレンチまたはスパナロックナットの固定や、ハブナットの取り外しに使用します。
自転車用グリスベアリングの潤滑と保護に使います。粘度や耐久性に優れた専用品がおすすめです。
ディグリーザーとウェス古いグリスや汚れを洗浄するために使います。パーツクリーナーでも代用可能です。
スプロケット外し工具後輪ハブの作業に必須。カセットスプロケット用とボスフリー用で工具が異なります。
上級 (ベアリング・ハブ交換)ベアリングプーラーシールドベアリングをハブ本体から抜き取るための専用工具です。
ベアリングプレスシールドベアリングをハブ本体に均等に圧入するための専用工具です。
ニップル回し (スポークレンチ)ハブ本体を交換する際のホイールの分解・組み立てに使用します。

ハブコンレンチは、玉押しとロックナットという2つの薄いナットを操作するために必須です。一般的なスパナでは厚すぎて隙間に入らないため、必ず用意してください。また、後輪の作業ではスプロケットを外さないとハブの右側(ドライブ側)にアクセスできないため、スプロケット外し工具も必須となります。これらの工具への投資が、DIY成功への第一歩です。

【手順1】後輪の外し方とスプロケットの取り外し

ここでは、作業がより複雑な後輪を例に、ハブ分解の最初のステップを解説します。まず、自転車から後輪を安全に取り外してください。

次に、ハブメンテナンス最初の関門であるスプロケットの取り外しです。スプロケットには大きく分けて「カセットスプロケット」と「ボスフリー」の2種類があり、使用する工具と方法が異なります。

カセットスプロケットの場合

現代のスポーツバイクの主流です。スプロケットリムーバー(チェーンが付いた工具)でスプロケットが空転しないように固定し、ロックリング回しという専用工具をモンキーレンチ等で反時計回りに回してロックリングを緩めます。

ボスフリーの場合

シティサイクルや旧式のスポーツバイクに見られます。フリーホイールリムーバーという専用工具をスプロケット中央の溝にはめ込み、大きなモンキーレンチで反時計回りに回して外します。

どちらのタイプもペダルを漕ぐ力で固く締まっているため、取り外すにはかなりの力が必要です。工具が外れて怪我をしないよう、体重をかけて一気に力を加えるのがコツです。この作業をクリアすれば、いよいよハブ本体の分解に進めます。

【手順2】ハブの分解と洗浄、グリスアップのコツ

スプロケットを外したら、カップ&コーン式を例にいよいよハブを分解します。

  1. ロックナットと玉押しの取り外し: まず、反フリーボディ側(ギアが付いていない左側)のロックナットを緩めます。内側の玉押しをハブコンレンチで固定し、外側のロックナットを別のレンチで反時計回りに回します。ロックナットが外れたら、玉押しも手で回して外せます。
  2. ハブ軸とベアリングの抜き取り: 玉押しを外すと、ハブ軸(シャフト)をフリーボディ側から引き抜けます。この際、内部のボールベアリングがこぼれ落ちやすいため、下にトレーなどを敷いて作業しましょう。ピンセットや磁石付きのドライバーを使うと、ベアリングを一つずつ丁寧に取り出せます。
  3. 部品の管理と洗浄: ベアリングは左右で数が異なる場合があるため、必ず左右別々の容器で保管し、数を数えておきます。取り外した全部品はディグリーザーで洗浄し、古いグリスや汚れを徹底的に拭き取ります。
  4. 点検: 洗浄した玉押しとハブ本体のカップの表面をよく観察し、虫食い状の傷や摩耗がないかを確認します。ここに傷があれば、ハブの寿命が近いサインです。
  5. グリスアップ: ハブ本体のカップ部分に新しいグリスを充填します。カップの8分目程度まで、ベアリングが収まる場所に均一に塗るのがコツです。

【手順3】最重要工程!ハブの組み立てと玉当たり調整

洗浄とグリスアップが完了したら、逆の手順でハブを組み立てます。ここからがハブメンテナンスで最も重要かつ繊細な工程、「玉当たり調整」です。この調整の出来栄えが、ホイールの回転性能とハブの寿命を決定づけます。

  1. ベアリングの再設置: グリスを塗ったカップに、左右の数を間違えないよう注意しながらベアリングを一つずつ丁寧に戻します。
  2. ハブ軸の挿入と仮締め: ベアリングを入れ終えたら、ハブ軸を差し込み、玉押しとロックナットを手で軽く締めて仮組みします。
  3. 玉当たり調整: ハブコンレンチを使い、玉押しの締め込み具合を調整します。目指すのは、「ガタつきが一切なく、かつ、回転にゴリゴリとした抵抗が全くない」という絶妙なポイントです。まず、玉押しを少しずつ締め、ハブ軸を左右に揺すってガタを確認します。ガタがなくなったら、ハブ軸を指で回し、少しでも「ゴリゴリ」感があれば締めすぎなので、ごくわずかに緩めます。
  4. ロックナットの本締め: 最高のポイントが見つかったら、玉押しが動かないようにハブコンレンチで固定したまま、外側のロックナットをレンチでしっかりと締め込みます。このとき、ロックナットを締める力で玉押しが共回りし、調整が微妙にきつくなることがあります。その分を見越して、ほんのわずかに緩めに調整しておくのがプロのコツです。

総括:自転車のハブ交換について

この記事のまとめです。

  • ハブの不調は異音やガタつきで判断できる
  • 正確な診断が不要な出費を防ぐ第一歩である
  • プロの工賃は作業内容で大きく変動する
  • 後輪ハブの作業は工賃が高くなる傾向にある
  • DIYには専用工具への初期投資が必要だ
  • ハブには主にカップ&コーン式とシールド式の2種類がある
  • 使用する工具はハブの種類によって全く異なる
  • シマノ製ハブのカップは原則交換不可である
  • カップの傷はハブ本体の寿命を意味する
  • スプロケットの取り外しは固く締まっていることが多い
  • 分解時の部品管理は非常に重要である
  • ベアリングは左右で混ぜてはならない
  • グリスの充填は多すぎても少なすぎてもいけない
  • 玉当たり調整はハブの性能と寿命を左右する最重要工程だ
  • 調整はガタなく滑らかに回る絶妙な位置を見つける作業である
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この記事を書いた人

はじめまして、チャリネコです。
子どもから大人まで、きっと誰もが一度は乗ったことのある自転車。
とても身近な乗り物だけど、実は知らないことっていっぱいありませんか?

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