「自転車に乗るとおしりの骨が痛い…」そんな辛い悩み、本当によく分かります。気持ちよく走りたいのに、痛みでサイクリングの楽しさが半減してしまうのは、実にもったいないことです。
この痛みの原因は、単に「サドルが硬いから」という単純な話ではありません。実は、あなたの乗車姿勢、サドルと骨盤の相性(特に幅や形状)、そして体重を支える坐骨という骨の三者の関係性が、複雑に絡み合って生じています。
この記事では、その根本原因を一つひとつ解き明かし、プロの視点から具体的な解決策を徹底解説します。
ご自身の坐骨幅を測って科学的にサドルを選ぶ方法から、お金をかけずにできるサドルの調整方法、驚くほど効果のあるパッド付きパンツの活用法、さらには痛みを予防する乗り方の工夫や体幹トレーニングまで、この1記事を読めば、きっとあなたの悩みを解決する道筋が見つかるはずです。
- お尻の骨が痛む根本的な原因を解明
- 自分に合うサドルの科学的な選び方
- 痛みを取り除くサドルの正しい調整方法
- 初心者でもできる即効性のある対策
自転車でおしりの骨が痛い!その根本原因を徹底解明
- 痛みの主役「坐骨」とサドルの関係
- 乗車姿勢が原因?初心者に多い痛みパターン
- サドルの幅が合っていない可能性
- サドルの形状が骨盤にフィットしていない
- 女性特有のお尻の痛みとその理由
痛みの主役「坐骨」とサドルの関係

自転車に乗った際にお尻が痛む、その痛みの中心は多くの場合、骨盤の下部に左右一対で存在する「坐骨結節(ざこつけっせつ)」、通称「坐骨」と呼ばれる骨です。この坐骨は、私たちが椅子に座る時に体重を支える土台となる、非常に重要な役割を担っています。
一般的な椅子のように座面が広ければ、体重はお尻の筋肉全体に分散されます。しかし、ロードバイクやクロスバイクなどに採用されているサドルは、非常に細く設計されているため、上半身の体重がこの左右二つの小さな坐骨の突起に集中的にかかってしまいます。これが、お尻の骨にピンポイントな痛みが発生する最も直接的な原因です。
では、なぜスポーツバイクのサドルはこれほど硬く、細い形状なのでしょうか。それは、効率的なペダリングと快適性を両立させるための機能的なデザインだからです。仮にサドルがクッション性に富んだ柔らかいものであれば、ペダルを漕ぐ力がお尻の沈み込みによって吸収されてしまい、推進力が損なわれます。また、幅が広すぎると、ペダリングの際に内ももがサドルに擦れ、「股ずれ」という別の問題を引き起こしてしまいます。
つまり、優れたサドルに求められるのは、単純な「柔らかさ」ではなく、坐骨を点でしっかりと支える高度な「支持性」なのです。坐骨がサドル上で安定して支えられることで、初めてブレのない効率的で快適なペダリングが可能になります。この「支持」と「圧力」の絶妙なバランスが崩れた時、お尻の骨に耐えがたい痛みが生じるのです。
乗車姿勢が原因?初心者に多い痛みパターン

お尻の痛みを訴える方の多くは、実は根本的な原因が乗車姿勢に隠されています。特にサイクリングを始めたばかりの初心者は、知らず知らずのうちにお尻が痛くなる乗り方をしてしまっているケースが少なくありません。
スポーツバイクに不慣れな場合、ついシティサイクル(ママチャリ)と同じ感覚で、背筋を地面に対して垂直に近い状態に伸ばしてサドルに座りがちです。この姿勢は一見すると楽に感じられますが、上半身の体重がほぼすべてサドル、つまり坐骨に垂直にのしかかるため、お尻への負担が最大化してしまいます。これは痛みを誘発する典型的な乗り方です。
一方で、経験豊富なサイクリストが実践する「前傾姿勢」は、単なるスタイルではありません。体重を「サドル」「ハンドル」「ペダル」の3点に巧みに分散させるための、極めて合理的なフォームなのです。ハンドルとペダルにも適切に体重が乗ることで、サドルへの荷重が劇的に減少し、結果としてお尻の痛みが和らぎます。
しかし、初心者がいきなり深い前傾姿勢を維持するのは困難です。なぜなら、理想的な前傾姿勢を保つには、腕、背中、そして身体の中心を支える体幹の筋力が不可欠だからです。つまり、お尻の痛みは「自転車が身体に合わない」という機材の問題だけでなく、「乗りこなすための身体がまだ準備できていない」というフィットネスレベルのサインでもあるのです。また、ゆっくりした速度で重いギアを踏んでいると、体重がサドルにかかる時間が長くなります。ペダルの回転数(ケイデンス)を少し上げ、軽快に回す乗り方もお尻への負担軽減に繋がります。
サドルの幅が合っていない可能性
乗車姿勢を意識し、改善しても痛みがなくならない場合、次に疑うべきは「サドルとあなたの骨格のミスマッチ」です。その中でも、快適性を左右する最も重要な要素が、サドルの「幅」が自身の坐骨の幅に適合しているかどうかという点です。
ここでよくある誤解が、サドルの幅を「お尻の肉付きの良さ」や「ヒップサイズ」で判断してしまうことです。しかし、本当に重要なのは、あくまで骨格である「坐骨結節」の左右の突起間の距離(坐骨幅)です。この骨の幅にサドルの幅を合わせることが、痛み解決の鍵となります。
もし、あなたの坐骨幅に対してサドルが狭すぎると、坐骨がサドルの両脇に落ち込んでしまい、本来体重を支えるべきではない中央のデリケートな部分(会陰部)に強い圧力が集中してしまいます。これは鋭い痛みを引き起こすだけでなく、血流を阻害し、しびれの原因にもなるため非常に危険です。
逆に、サドルが必要以上に広すぎるとどうなるでしょうか。この場合、ペダリングの動作のたびに、太ももの内側がサドルの縁に繰り返し擦れることになり、不快な「股ずれ」を引き起こしてしまいます。これもまた、サイクリングの楽しさを奪う大きな要因です。
このように、サドルの幅が自身の骨格に対して数ミリ違うだけで、乗り心地は天国と地獄ほどの差が生まれます。まずは自分の坐骨幅を正確に知り、その数値に基づいて科学的にサドルを選ぶこと。それが、お尻の痛みから恒久的に解放されるための、最も確実な一歩と言えるでしょう。
サドルの形状が骨盤にフィットしていない

サドルの幅が骨格に合っているはずなのに、まだ痛みが残る、あるいは違和感がある。その場合は、次にサドルの「形状」に注目してみましょう。サドルは単に幅だけでなく、座面のカーブやデザインによって多種多様な形状が存在し、それぞれに異なる目的と特徴があります。
フラットタイプ: 横から見たときに座面が平らなサドルです。サドル上で座る位置を前後に動かしやすいため、登りや平坦など、走行状況に応じて積極的にポジションを変えたい攻撃的なスタイルのライダーに適しています。自由度が高い反面、坐骨を「点」で支える傾向が強く、人によっては圧力が集中しやすいと感じることもあります。
ウェーブ(湾曲)タイプ: サドルの後方が反り上がった波型の形状をしています。このカーブがお尻から腰にかけてを包み込むように支えるため、骨盤が安定し、どっしりと落ち着いたポジションで座ることができます。長距離を一定のペースで走るなど、一つのポジションで安定して乗りたい人に向いています。
穴あき(カットアウト)タイプ: サドルの中央部分に大きな穴や溝が設けられたタイプです。これは、尿道や会陰部といったデリケートな部分への圧迫を物理的に取り除くことを最大の目的としています。特に長時間のライドで股間に痛みやしびれを感じる方に、絶大な効果を発揮することがあります。ただし、穴がある分、その周囲の座面に体重が分散されるため、サドルの幅や角度の調整がよりシビアになる側面もあります。
ショートノーズタイプ: サドルの先端(ノーズ)部分が一般的なモデルよりも大幅に短いデザインです。深い前傾姿勢をとった際に、サドルの先端が下腹部や内ももに干渉するのを防ぎ、よりアグレッシブなエアロポジションを快適に維持するために開発されました。
これらの形状に絶対的な優劣はありません。あなたの体の柔軟性、骨盤の傾き方(前傾か後傾か)、そして主なライディングスタイルによって最適な形状は全く異なります。自身の痛みの種類や乗り方を深く分析し、それに合った形状を戦略的に選ぶことが重要です。
女性特有のお尻の痛みとその理由

女性サイクリストの中には、男性とは異なる特有のお尻の痛みに悩まされている方が少なくありません。これには、男女間における骨格の根本的な違いが大きく関係しています。
一般的に、女性は出産に備える身体の構造上、男性よりも骨盤が横に広いという特徴があります。それに伴い、体重を支える坐骨結節間の幅も、平均して男性より広い傾向にあるのです。多くのスポーツバイクに最初から取り付けられている、いわゆる「ユニセックス(男女共用)」のサドルは、男性の平均的な骨格を基準に設計されていることが大半です。そのため、多くの女性にとってはサドルの幅が狭すぎて、最も重要な坐骨を適切に支えきれていないケースが頻繁に発生します。
坐骨がサドルの支持面から落ち込んでしまうと、体重は本来支えるべきでないデリケートな軟部組織で受け止められることになります。これが、女性サイクリストが経験する強い痛みや不快感の主な原因となっているのです。
この問題を解決するため、現在では多くのサドルメーカーが「女性用モデル」を開発・販売しています。これらは単にデザインやカラーリングが女性向けというだけではありません。女性の広い坐骨幅に対応するために座面が広く設計されていたり、軟部組織への圧迫をより効果的に避けるために穴あき部分の形状が最適化されていたりと、解剖学的な違いに基づいた工夫が凝らされています。
ただし、これも個人差が非常に大きい部分です。すべての女性の坐骨が広いわけではありませんし、逆に男性でも平均より広い坐骨幅を持つ人もいます。重要なのは「女性だから女性用サドル」という短絡的な思考ではなく、「自分の骨格を正しく理解し、そのデータに基づいて科学的にサドルを選ぶ」という視点です。そのための不可欠な第一歩が、次に解説する「坐骨幅の測定」なのです。
自転車でおしりの骨の痛みを解消する5つの具体的アプローチ
- 【最重要】坐骨幅を測り自分に合うサドルを選ぶ方法
- サドルの高さ・角度・前後位置の最適化
- パッド付きサイクルパンツの効果と正しい使い方
- 痛みの種類別(坐骨・尿道・股ずれ)対策
- 今すぐできる!乗り方の工夫と体幹トレーニング
【最重要】坐骨幅を測り自分に合うサドルを選ぶ方法
お尻の痛みを根本的に、そして科学的に解決するために最も効果的なアプローチが、「自身の坐骨幅を正確に測定し、そのデータに基づいて最適な幅のサドルを選ぶ」ことです。専門のサイクルショップで専用の機材を使って測定してもらうのが最も確実ですが、実は自宅にある身近なものでも簡単に、そして十分に実用的な精度で測ることが可能です。
自宅でできる坐骨幅の測り方(段ボール編)
- 準備: 少し硬めの安定した椅子と、その座面より少し大きいサイズの段ボールを1枚用意します。
- 着座: 椅子の上に段ボールを置き、その上に座ります。この時、ただ座るのではなく、少し前傾姿勢になり、実際に自転車に乗っている状態をイメージするのが重要なポイントです。両手で椅子の縁をつかみ、お尻をグッと段ボールに押し付け、坐骨の先端がしっかりと跡を残すようにします。
- 特定: ゆっくりと立ち上がり、段ボールの表面に残った二つの明確なくぼみを確認します。これがあなたの坐骨が当たっていた跡です。
- 計測: 二つのくぼみの中心点から中心点までの距離を、定規やメジャーを使ってミリ単位で正確に測ります。この測定値が、あなたの「坐骨幅」となります。
さて、自身の坐骨幅が判明したら、いよいよサドル選びです。ここで重要になるのが、**「サドル幅 = 坐骨幅 + 20~30mm」**という基本の公式です。これは、測定した坐骨がサドルの上で安定して支えられるように、左右それぞれに10mmから15mm程度の余裕を持たせるのが理想的とされているためです。
例えば、あなたの坐骨幅が110mmだった場合、選ぶべきサドルの理想的な幅は130mmから140mm程度が目安となります。多くのサドルメーカーは、同じモデルでも複数の幅のサイズ(例: 130mm, 140mm, 150mmなど)を展開しています。この知識があれば、もう当てずっぽうでサドルを選ぶ必要はありません。自分の骨格データに基づいた、賢明で合理的な選択が可能になるのです。
サドルの高さ・角度・前後位置の最適化

新しいサドルを購入する前に、まず絶対に試してほしいのが「サドルの位置調整」です。これはコストを一切かけずに、今すぐ実践できる非常に効果的な対策です。サドルの高さ、角度、前後位置がほんの少し違うだけで、お尻への負担は劇的に変化します。
高さの調整: サドルが適正位置より低すぎると、ペダルに体重が十分に乗り切らず、結果としてお尻に体重が集中し痛みへと繋がります。逆に高すぎると、ペダルを漕ぐたびに骨盤が左右に大きく揺さぶられ、サドルとの過剰な摩擦で股ずれや痛みの原因となります。まずは、サドルにまたがり、かかとをペダルに乗せて膝がちょうどまっすぐ伸びきる高さに合わせる「かかとセッティング法」で、大まかな基準となる高さを出してみましょう。
角度の調整: サドルの角度は、座面が地面と「水平」であることが基本中の基本です。スマートフォンの水準器アプリなどを使えば、誰でも正確に調整できます。もし、乗車中に股間(会陰部)に圧迫感やしびれを感じる場合は、サドルの先端をほんの少し(1~2度)下げてみると、圧迫が和らぐことがあります。ただし、先端を上げすぎると逆に圧迫を強めてしまうため、サドルが前上がりのセッティングになることは絶対に避けましょう。
前後位置の調整: サドルの前後位置は、ペダリング効率と体重バランスに大きく影響します。一般的な基準となるのは、クランク(ペダルが付いている腕)を地面と水平にしたときに「膝のお皿の真下とペダルの軸が、地面に対して垂直線上にくる」位置です(通称KOPS法)。サドルを後ろに引くほど後傾姿勢になりお尻への荷重が増え、前に出すほど前傾姿勢になりハンドルへの荷重が増える傾向があります。
これらの調整は互いに影響し合うため、一つ調整したら少し乗って感触を確かめ、また一つ調整する、というように焦らず丁寧に行うことが成功の秘訣です。
パッド付きサイクルパンツの効果と正しい使い方
サドルの選択や調整と並行して、ぜひ導入を強く推奨したいのが「パッド付きサイクルパンツ(レーサーパンツやビブショーツ)」です。これは、お尻の痛みを軽減するための最も強力で即効性のあるアイテムの一つと言っても過言ではありません。
パンツに内蔵されたパッド(シャモアとも呼ばれます)は、高密度のウレタンフォームやゲルといった衝撃吸収素材で作られており、主に二つの重要な役割を果たします。一つ目は、坐骨にかかる局所的な圧力を広範囲に分散・吸収するクッションとしての機能です。これにより、骨への直接的な負担を大幅に和らげます。二つ目は、縫い目のない滑らかな生地が素肌に直接密着することで、ペダリング時の皮膚とサドルの摩擦を限りなくゼロに近づけ、股ずれを効果的に防止する機能です。
ここで、サイクルパンツの性能を最大限に引き出すために、絶対に守ってほしい「黄金のルール」があります。それは、**「サイクルパンツの下には、下着を履かない」**ということです。
下着を履いてしまうと、その下着の縫い目や生地の段差が新たな圧迫点を生み出し、痛みの原因になってしまいます。また、汗を吸って乾きにくい綿などの素材は、肌が蒸れてふやける原因となり、かえって摩擦によるスキントラブル(股ずれや肌荒れ)を引き起こしやすくするのです。サイクルパンツは、素肌に直接履くことで、その機能が100%発揮されるように設計されていることを覚えておきましょう。
最近では、本格的なレーサーパンツだけでなく、普段着のズボンの下に履ける目立たない「パッド付きインナーパンツ」も非常に充実しています。通勤や街乗りといったシーンでも、見た目を気にすることなくお尻の快適性を手に入れることができるので、ぜひ試してみてください。
痛みの種類別(坐骨・尿道・股ずれ)対策
あなたを悩ませる痛みは、お尻のどの部分に感じますか?痛みの発生場所によって、考えられる原因と有効な対策は異なります。以下の表を参考に、ご自身の症状に最も合った解決策を見つけ出し、的確に対処しましょう。
痛みの種類 | 主な原因 | 効果的な対策 |
坐骨の痛み (骨が当たる痛み) | ・サドル幅が坐骨に合っていない(特に狭すぎる) ・乗車姿勢が直立しすぎている(後傾姿勢) ・サドルが高すぎる(骨盤が左右に揺れる) ・サドルのクッション性が不足 | ・坐骨幅を測定し、適切な幅のサドルに交換 ・正しい前傾姿勢を意識し、荷重を分散させる ・サドルの高さを適正化する ・パッド付きサイクルパンツを着用する |
尿道・会陰部の痛み/しびれ (股間の前方の痛み) | ・サドルが前上がりになっている ・サドルが坐骨を支えきれず、軟部組織に圧力が集中 ・深い前傾姿勢による圧迫 | ・サドル中央に穴や溝がある「穴あきサドル」に交換 ・サドルの角度を水平、もしくはわずかに前下がりに調整 ・深い前傾姿勢に対応した「ショートノーズサドル」を試す |
股ずれ (内ももの擦れ) | ・サドルのノーズ(先端部分)が太すぎる ・サドル幅が広すぎる ・ペダリング時の内ももの摩擦 ・下着の着用や不適切なウェア | ・ノーズが細いデザインのサドルを選ぶ ・パッド付きサイクルパンツを(下着なしで)着用する ・股ずれ防止用の「シャモアクリーム」を使用する |
この表は、いわばあなたの痛みの「診断書」のようなものです。例えば、「サドルの前方に座るとしびれる」という症状があれば、原因は「サドルの角度」や「軟部組織への圧迫」にある可能性が高く、対策としては「サドルの角度調整」や「穴あきサドルへの交換」が有効だと判断できます。このように、痛みの症状と原因、対策を正しく結びつけることが、問題解決への最短ルートとなります。
今すぐできる!乗り方の工夫と体幹トレーニング

サドルやウェアといった機材の対策と並行して、ライダー自身が意識を変えることでできることも沢山あります。これらは、痛みを根本から断ち切り、より快適なサイクリングを長く楽しむための、持続可能で本質的な解決策です。
乗り方の工夫
- 定期的な立ちこぎ(ダンシング): 長時間同じ姿勢で座り続けると、血流が滞り痛みの原因となります。15~20分に一度、15秒ほどで良いのでサドルからお尻を浮かして立ちこぎをしてみましょう。これだけでお尻への圧迫が完全にリセットされ、血流が回復します。信号待ちからのスタート時や、コース上にある短い坂道などを利用して、意識的に行うのがおすすめです。
- お尻の位置を動かす: 常にサドルの全く同じ位置に座り続けるのではなく、数分おきに少しだけお尻を前後にずらしてみましょう。これにより、圧力がかかるポイントが微妙に変化し、一点に負担が集中し続けるのを防ぐことができます。
体幹トレーニング
これまで述べてきたように、楽で効率的な前傾姿勢を維持できないのは、体幹の筋力不足が大きな原因です。強い体幹は上半身を安定して支え、お尻に不要な体重がかかるのを防ぎ、ペダリングのパワーを効率的に自転車に伝えてくれます。特別な器具は必要ありません。自宅でできる簡単なトレーニングを習慣にしましょう。
- プランク: うつ伏せになり、両肘とつま先で体を支えます。頭からかかとまでが一直線になるように意識し、その姿勢を30秒キープすることから始めましょう。お腹に力を入れ、お尻が上がったり腰が反ったりしないように注意します。
- ヒップリフト(お尻上げ): 仰向けに寝て膝を90度に立て、足は腰幅に開きます。お尻の筋肉を意識しながら、肩から膝までが一直線になるように腰を持ち上げ、数秒キープしてからゆっくりと下ろす動作を繰り返します。骨盤を安定させる筋肉を鍛えるのに効果的です。
- デッドバグ: 仰向けに寝て、両手は天井へ、両足は股関節と膝が90度になるように持ち上げます。お腹に力を入れて腰が床から浮かないように意識しながら、「右腕と左脚」を同時に、「左腕と右脚」を同時に、というように対角線の手足をゆっくりと伸ばし、元の位置に戻します。体幹を安定させる能力を高めます。
これらのトレーニングはお尻の痛みを解消するだけでなく、ペダリングの安定性向上や腰痛予防にも直結し、あなたのサイクリングライフ全体をより豊かなものにしてくれるはずです。
総括:自転車 おしりの骨が痛い
この記事のまとめです。
- 自転車のお尻の痛みは坐骨への過度な圧迫が主な原因である
- 初心者は直立姿勢で乗るため坐骨に体重が集中しやすい
- 正しい前傾姿勢は体重をハンドルとペダルに分散させる
- サドル選びはヒップサイズではなく坐骨幅が基準である
- 自宅の段ボールで坐骨幅は簡易的に測定可能だ
- 坐骨幅に20mmから30mm足したものが適切なサドル幅の目安となる
- サドルの調整はまず高さから見直すべきである
- サドルの角度は水平が基本、前下がりは尿道圧迫を軽減する
- パッド付きサイクルパンツは圧力分散と摩擦軽減に絶大な効果を発揮する
- サイクルパンツの下に下着を履くのは逆効果である
- 尿道の痛みには穴あきサドルが有効な選択肢となる
- 股ずれはサドルのノーズ形状やウェアが原因で起こる
- 定期的に立ちこぎをすると血流が回復し痛みが和らぐ
- 安定した乗車姿勢には体幹の筋力が不可欠である
- プランクなどの簡単なトレーニングを習慣にすることが根本解決に繋がる