雨の日 自転車通勤を安全快適に続ける装備と走り方完全対策ガイド

雨の日でも自転車通勤を続けたいけれど、びしょ濡れになる不快感や、スリップ・視界不良による事故の不安から、つい電車や車に切り替えてしまう人は多いと思います。

この記事では、日本国内で通勤・通学に自転車を使う人を対象に、雨の日自転車通勤のリスクと交通ルール、レインウェアやレインポンチョ、フェンダー、シューズカバーなどの装備の選び方、ブレーキやタイヤの雨天対策、そして「今日は無理せず別の手段に切り替える」ための判断基準までをまとめて解説します。

雨の日の自転車通勤を、安全かつ快適に続けるための実践的なノウハウを、一つずつ整理していきます。

この記事のポイント
  • 雨の日自転車通勤で増えるリスクと、押さえておきたい交通ルールの基礎が分かる
  • レインウェア・レインポンチョなど装備の種類と選び方、注意点が分かる
  • ブレーキ・タイヤ・フェンダーを含む「自転車側」の雨天対策の方向性が分かる
  • 無理せず代替手段に切り替えるための現実的な判断基準を持てる
目次

雨の日 自転車通勤の基本とリスク

  • 雨の日の路面で起こる危険
  • 見えにくさと被視認性対策
  • 日本の交通ルールと傘差し運転
  • 雨の日でも自転車通勤する判断基準
  • 雨天前の自転車点検ポイント

雨の日の路面で起こる危険

雨の日の路面で起こる危険

雨の日の自転車通勤でまず知っておきたいのは、「乾いた路面と比べてどれくらい滑りやすくなるのか」という点です。長崎県警の資料では、雨天時の制動距離は乾燥路面の約1.5倍必要になるとされています。

つまり、晴れの日と同じ感覚でブレーキをかけると止まりきれず、交差点や横断歩道をオーバーランしてしまう危険が高まります。通勤ルート上の信号や横断歩道の手前では、いつもより一呼吸早く、余裕を持って減速することが重要です。

特に滑りやすいのは、マンホールのふた、白線や横断歩道のペイント部分、グレーチング(側溝の金属格子)、タイル舗装された歩道など、元々ツルツルした素材の上です。これらは雨で水膜ができると、タイヤのゴムが路面をつかみにくくなり、急なブレーキやハンドル操作で簡単にスリップします。可能であれば、白線やマンホールを避けるライン取りを意識しておくと安心です。

また、「降り始めの雨」は特に危険です。路面に付着していた砂ぼこりや油分が雨で浮き上がり、短時間でも極端に滑りやすくなります。出発直後の数キロは、スピードを抑え、強いダンシングや急加速を避けるなど、慎重な操作を心掛けましょう。

路肩付近に溜まる水たまりも要注意です。舗装の割れや穴、段差を隠していることがあり、はまると一気にバランスを崩します。平日の晴れた日に、通勤ルート上で水たまりができやすい場所を把握しておき、「雨の日はここでは少し内側を走る」といった自分なりの安全ラインを決めておくと、雨の日のストレスが大きく減ります。

さらに、雨の日はチェーンやブレーキシューも濡れた状態で使われるため、摩耗やサビが進みやすくなります。ブレーキシューの削れかすや砂がリムやローターを傷めることもあるので、帰宅後に水滴を拭き取り、週末に簡単な清掃と注油をするだけでも、翌日以降の制動力低下やトラブル防止に役立ちます。

見えにくさと被視認性対策

見えにくさと被視認性対策

雨の日は、路面だけでなく「見えにくさ」が大きなリスクになります。雨粒や水しぶきで視界が遮られ、メガネやレインフードが曇ったり濡れたりすることで、歩行者やクルマ、信号が見えにくくなります。

国民生活センターが、自転車運転時にレインウェアを使用する1,147人を対象に行った調査では、過去5年以内に「レインウェアが原因で危ないと感じた」人が36.4%(418人)、「実際にけがをした」人が5.2%(60人)いました。危険を感じた理由としては、「レインウェアのせいで周囲が見えなかった」が最多で、「裾やフードの巻き込み」「風であおられた」なども多く挙げられています。

フード付きレインウェアを選ぶ場合は、顔周りを覆い過ぎないことと、首を振ったときに頭の動きに合わせてフードも一緒に回る構造かどうかが重要です。回転フード構造や、透明なツバ付きバイザーで視界を確保したモデルであれば、左右確認がしやすく、交差点での安全確認もしやすくなります。

一方で、「自分が見える」だけでなく「他者から見られる」ことも同じくらい大切です。レインウェアやレインポンチョは黒やネイビーなど暗い色が多いですが、雨天時はボディに反射材(リフレクター)が配置されているモデルや、黄色・ライム・オレンジなど明るい色を選ぶと被視認性が大きく向上します。トンネルや高架下が多いルートでは、レインウェアの反射プリントに加え、バッグやヘルメットに巻き付ける反射バンドやリアライトを追加すると効果的です。

ヘルメット着用については、道路交通法の改正により、2023年4月1日から全ての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務が課されています。 雨の日は転倒リスクが高まるうえ、濡れた路面では頭から滑るように倒れることもあります。レインフードの下にしっかりヘルメットをかぶり、フードやバイザーがヘルメットに干渉しないレインウェアを選ぶと、安全性と快適性の両方を確保しやすくなります。

メガネ利用者は、レインウェアのフードと相性が悪いことも多いので、つば付きのレインハット+ヘルメットや、透明バイザー一体型のレインコートなど、自分の視力矯正手段に合う組み合わせを試してみるとよいでしょう。

日本の交通ルールと傘差し運転

日本の道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類されます。したがって、歩道と車道の区別がある道路では車道通行が原則で、車道の左端寄りを通行しなければなりません。 警察庁がまとめた自転車安全利用五則でも、「車道が原則、左側通行」「交差点では信号と一時停止を守る」「夜間はライト点灯」「飲酒運転の禁止」「ヘルメット着用」が基本として示されています。

雨の日もこの基本ルールは変わりません。むしろ、滑りやすさや視界不良を考えると、車間距離を余計に取る、一時停止や徐行の場面を増やすなど、一つ一つの行動を丁寧にする必要があります。

多くの人が気にする「傘差し運転」については、多くの都道府県の道路交通法施行細則で明確に禁止されており、道路交通法120条1項10号に基づき、5万円以下の罰金の対象となります。

さらに、2026年4月1日施行予定の道路交通法改正により、16歳以上の自転車利用者の一部違反には青切符制度(交通反則通告制度)が導入される予定で、傘差し運転やイヤホンを使用しながらの運転などは5,000円の反則金となる見込みです(2025年12月時点)。

ハンドルに固定する傘スタンド(いわゆる「さすべえ」など)については、道路交通法そのものでは一律に禁止されているわけではありませんが、都道府県の公安委員会規則や自治体の条例によっては禁止される場合があります。 使用可否は地域によって異なるため、実際に使う前に居住地の警察署や自治体の情報で確認することが重要です。

また、スマートフォンを操作しながらの「ながら運転」や、画面を注視しながらの運転も、各地の公安委員会規則で禁止されているケースが多く、青切符制度でも高額の反則金対象行為に含まれる予定です。 ナビや音楽の設定は必ず停車中に行い、走行中は前方と周囲の状況確認に集中しましょう。

なお、歩道通行が認められる条件(「普通自転車歩道通行可」の標識がある、13歳未満や70歳以上、身体障害など、やむを得ない場合など)は、全国共通の基本がありますが、運用や標識の設置状況は自治体によって異なります。自分の生活圏のルールを、警察や自治体の公式情報で一度確認しておくと安心です。

雨の日でも自転車通勤する判断基準

雨の日でも自転車通勤する判断基準

雨の日でも自転車通勤を続けるかどうかは、「どんな装備があるか」だけでなく、「降り方」「ルート環境」「職場環境」「体調」の4つで判断するのがおすすめです。

まず降り方について。しとしと雨〜弱い小雨程度なら、視認性の高いレインウェアと前後ライトがあれば、適切な速度と注意力を前提に、走行自体は十分現実的なケースが多いでしょう。一方で、横風を伴う強い雨、警報級の大雨、台風接近時などは、水たまりや冠水箇所が増え、クルマ側も視界が悪くなります。このレベルでは、どれだけ装備を整えてもリスクが高く、公共交通機関や在宅勤務への切り替えを第一候補にすべきです。

次にルート条件です。片側一車線で路肩が狭く、路上駐車が多い道は、晴れの日でもプレッシャーが強い場所ですが、雨の日はさらに厳しくなります。水たまりを避けて車道内側に寄るとクルマとの距離が近くなり、逆に距離を取ると側溝や段差に近づく、といったジレンマが生まれやすいからです。可能であれば、普段から「雨の日用ルート」として、自転車レーンや自転車通行帯がある道、歩行者が少なく幅の広い歩道がある道などを開拓しておくと、当日の判断が楽になります。

勤務先の環境も大きな要素です。レインウェアやシューズを干せる場所、着替えスペース、ロッカーの有無によって、雨の日の負担は大きく変わります。片道20〜30分を超える通勤なら、全身が濡れる前提で下着まで替えをロッカーに常備しておくか、「週の半分は雨天時は電車」というように、年間を通して無理のないルールを自分で決めておくと気が楽です。

最後に、自分の体調・メンタル状態です。睡眠不足や体調不良の日、強いストレスで集中力が落ちている日は、晴れの日でさえ事故リスクが高くなります。雨の日は情報量が多く、視界も悪い環境なので、「今日は何となく危ない気がする」と感じたら、自転車に乗らない選択ができるようにしておくことが大切です。「多少濡れても自転車」「今日は安全優先で電車」といった、自分なりの判断基準を事前に決めておきましょう。

雨天前の自転車点検ポイント

雨の日の自転車通勤を安全に行うためには、出発前の簡単な点検が欠かせません。特に重要なのは、ブレーキ・タイヤ・ライト・チェーンの4つです。

ブレーキは、レバーを握ったときの引きしろが大きくなりすぎていないか、ブレーキシュー(パッド)の残量は十分か、異音や引きずりはないかを確認します。リムブレーキの場合、リムが濡れると一瞬「空走」する時間が生じ、制動力が立ち上がるまでにタイムラグが出ます。ディスクブレーキは、ブレーキ面がリムから離れている構造のため、雨や水はねの影響を受けにくく、濡れた路面でも比較的安定した制動力を発揮しやすいと、自転車専門店でも説明されています。 どちらの方式でも、雨の日は早め弱めのブレーキで、十分な距離を取ることが前提です。

タイヤは、トレッドの摩耗具合とサイドのひび割れをチェックします。スリップサインが出ているタイヤや、サイドがひびだらけになっているタイヤは、晴れの日でもリスクが高く、雨の日はなおさら危険です。空気圧は、高すぎると接地面が小さくなりグリップが低下しやすいので、メーカー推奨空気圧の下限〜中間あたりを目安に調整すると、乗り心地とグリップのバランスが取りやすくなります。

ライトは「点くかどうか」だけでなく、「隠れていないか」も重要です。レインポンチョの裾やフロントバスケットの荷物で前照灯が隠れたり、リュックでリアリフレクターが見えにくくなっているケースはよくあります。雨天時は日中でも視認性が落ちるため、昼間でも前後ライトを点灯しておくくらいでちょうどいいと考えましょう。サドルバッグやバッグ背面に小型リアライトを追加すると、被視認性がさらに高まります。

チェーンは、雨で油膜が流れやすくなります。通勤で頻繁に雨の日走行をするなら、比較的粘度が高い「ウェット系」のチェーンルブを使い、週末ごとに簡単な清掃と注油を行うと、異音や変速トラブルの予防になります。雨上がりに泥を含んだチェーンを放置すると、錆びやすくなるだけでなく、スプロケットやチェーンリングも早く摩耗します。

これらの点検を出発前の習慣にしておくと、「今日はブレーキの効きがいつもと違う」「タイヤが減ってきたから次の給料日で交換しよう」といった小さな変化に気づきやすくなり、結果として大きな事故のリスクを減らすことにつながります。

雨の日 自転車通勤を快適にする装備

  • レインウェアと防水素材の選び方
  • 靴と足元を守るカバー類
  • フェンダーとバッグで泥はね対策
  • ブレーキ・タイヤの雨天セッティング
  • どうしてもつらい日は代替手段も検討

レインウェアと防水素材の選び方

雨の日自転車通勤を快適にするうえで、中心的な装備となるのがレインウェアです。一般的にレインウェアは、上下セパレート型のレインスーツ、コート型のレインコート、ポンチョ型のレインポンチョの3種類に大きく分けられます。

通勤距離が長く、ある程度のスピードで走る人には、上下セパレート型のレインスーツが向いています。ジャケットとパンツが分かれているため動きやすく、風でバタつきにくいので、ペダリングを妨げにくいのがメリットです。坂道が多いルートや、クロスバイク・ロードバイクでしっかり走る人におすすめです。

一方で、数キロ程度の短距離通勤で、スーツやきれいめの服の上からさっと羽織りたい人には、ロング丈のレインコートやレインポンチョが便利です。バックパックごと覆えるポンチョは、子どもの送迎や荷物の多い通勤・通学でも使いやすいと、多くのショップや情報サイトで紹介されています。

生地性能を見るうえで重要なのが「耐水圧」と「透湿性」です。自転車用レインウェアの比較記事などでは、小雨メインなら耐水圧5,000mm程度、大雨も想定するなら10,000mm以上が目安とされており、耐水圧10,000mm前後あれば、自転車通勤を含めた日常使用には十分な防水性を期待できるとされています。

一方で、透湿性(g/m²/24h)の数値が高いほど、汗で発生した水蒸気を外に逃がしやすくなります。5,000〜8,000g程度で蒸れにくく、10,000g以上ならより快適と言われることが多いので、真夏の夕立や長時間通勤が多い人は、透湿性の高いモデルを優先して検討するとよいでしょう。

自転車ならではのポイントとして、フード形状と透明ツバの有無も重要です。透明バイザー付きフードなら、顔に当たる雨を防ぎつつ前方視界を確保できます。さらに、ヘルメットの上からかぶれる設計や、首の動きに追従する回転フード構造を採用したモデルであれば、左右確認がしやすく安全性が高まります。

通勤後の扱いやすさも忘れずにチェックしたいポイントです。職場で干すスペースが限られているなら、薄手で乾きやすく、コンパクトにたためるモデルが便利です。冬場の冷たい雨にも使うなら、若干厚手でも保温性があり、袖口・裾・首元の調整機能で冷気の侵入を防げるものを選ぶと、冷えによる疲労を軽減できます。

靴と足元を守るカバー類

靴と足元を守るカバー類

多くの通勤ライダーが悩まされるのが、「靴と靴下がずぶ濡れになる問題」です。上半身だけしっかりレインウェアを着ていても、足元対策が不十分だと、オフィスに着く頃には靴の中がぐっしょり、ということになりがちです。

足元の雨対策は、大きく「防水シューズ」「シューズカバー」「レインパンツの裾調整」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

防水シューズは、最初から防水透湿素材を使ったスニーカーやビジネスシューズを通勤用として選ぶ方法です。最近は見た目が革靴寄りの防水スニーカーも増えており、オフィスカジュアルであればそのまま仕事中も履いていられるモデルもあります。一足を雨用に決めてロッカーに置いておけば、予報が怪しい日でも安心です。

普段履いている革靴やスニーカーをそのまま使いたい場合は、上からかぶせるシューズカバーが便利です。完全に靴全体を覆うタイプは防水性が高く、大雨や水たまりが多いルートでも安心感があります。携帯性を重視するなら、つま先〜甲だけを覆う簡易タイプも選択肢です。通勤バッグに常備しておけば、帰宅時の急な雨にも対応できます。

レインパンツの裾は、「巻き込み防止」と「靴の中への浸水防止」の両面で重要です。ベルクロやドローコードでしっかり絞れるものを選ぶと、クランクやチェーンリングへの巻き込みを防ぎやすく、靴の中に流れ込む水も減らせます。国民生活センターの調査でも、レインウェアの裾が駆動部に巻き込まれて事故につながった事例が複数報告されており、裾の処理は安全面でも軽視できません。

サドルの高さと足の出し方にも一工夫できます。ペダルが一番下に来たとき、膝が伸び切る直前ぐらいの高さが基本ですが、雨の日だけサドルを数ミリ低くしておくと、信号待ちでの足つきが良くなり、水たまりを避けながら足を付く余裕が生まれます。停止の数メートル手前からしっかり減速し、水たまりを避けられる位置に自転車をコントロールする癖をつけると、靴底を深い水たまりに突っ込んでしまうリスクを減らせます。

フェンダーとバッグで泥はね対策

フェンダーとバッグで泥はね対策

雨の日にフェンダー(泥除け)の有無で大きく差が出るのが、背中やお尻、バッグの汚れです。フェンダーのないクロスバイクやミニベロで雨の日に走ると、前輪からはシューズやボトムの前側、後輪からは背中〜お尻に向かって一直線の泥はねラインができてしまいます。

通勤・通学向けのシティサイクルや電動アシスト自転車は、最初からフルフェンダーが付いていることが多いですが、スポーツバイクやスポーツタイプE-BIKEでは軽量化のため省略されていることも少なくありません。こうした車種で雨の日も走るなら、着脱式の後付けフェンダーを検討する価値は高いです。シートポストにワンタッチで取り付けられるリアフェンダーや、サドルレールに差し込む簡易フェンダーなど、通勤時のみ装着できる製品も多数あります。

前フェンダーも、シューズやボトムの汚れに大きく影響します。フロント側はフレームである程度カバーされますが、完全ではありません。雨上がりに速度を出して走ると、前輪からの水はねで靴の甲が一気に濡れることもあるため、可能であればフロント・リア両方にフェンダーを用意した方が安心です。

荷物の濡れ対策も重要です。バックパックを使う場合は、防水生地のモデルか、レインカバーを用意しておくと安心です。リアキャリアを使える車種なら、防水パニアバッグを左右に付けるスタイルも通勤向きです。書類やPCを運ぶ場合は、内側にもう一枚ドライバッグやジップ付きビニール袋を使った「二重防水」にすると、予想以上の土砂降りでも中身を守りやすくなります。

前カゴを使う場合は、バスケットカバーを付けると、雨よけ兼防犯対策になります。チャイルドシート付き自転車なら、チャイルドシート専用のレインカバーを用意すれば、子どもの雨よけと防寒にもなります。こうした「カバー系アクセサリー」は、自転車専門店の雨天向けグッズ特集でも定番として紹介されており、雨の日に自転車を日常使いするなら、少なくとも荷物用の防水手段は一つ用意しておきたいところです。

泥はねを完全にゼロにすることは難しいですが、フェンダー・カバー・防水バッグの組み合わせを工夫することで、シャツやスラックスへの被害を大きく減らせます。「雨の日でも服や荷物が汚れない」という安心感は、自転車通勤を続けるうえで非常に大きなモチベーションになります。

ブレーキ・タイヤの雨天セッティング

雨の日の自転車通勤では、装備だけでなく、自転車そのもののセッティングも重要です。特にブレーキとタイヤは、路面状況の変化をまともに受けるパーツなので、晴天時と同じ感覚で走るのは危険です。

ブレーキについては、リムブレーキとディスクブレーキで性質が異なります。リムブレーキは、リムのブレーキ面が濡れることで、パッドが水を掻き取るまでの間、制動力が立ち上がりにくくなります。実際に、雨天時の制動距離は乾燥路面の約1.5倍になるという警察の資料もあり、ブレーキ開始のタイミングそのものを早めにすることが不可欠です。

ディスクブレーキは、ブレーキ面がリムから離れている構造のため、水はねなどの影響を受けにくく、雨でも安定した制動力を得られることが大きなメリットとされています。 とはいえ、どのブレーキ方式でも、雨の日は「弱く長く」を基本とし、路面状況に応じて前後ブレーキの配分を調整することが重要です。特に下り坂では、前輪をロックさせないよう、姿勢を低くしながら、こまめに減速しておきましょう。

タイヤについては、「太さ」「空気圧」「コンパウンド(ゴム質)」の3点を意識します。通勤用クロスバイクに多い32〜38mm幅のタイヤであれば、メーカー指定空気圧の下限寄りに調整することで、接地面積が増え、ウェット路面でのグリップ向上が期待できます。ただし、極端に空気圧を下げるとリム打ちパンクのリスクが高まるため、指定範囲内での微調整にとどめることが大切です。

「雨の日だけ太いタイヤに履き替える」のは現実的ではありませんが、次にタイヤ交換をするタイミングで、耐パンクベルト入りでウェット性能にも配慮した通勤向けモデルを選ぶのは有効です。メーカーの製品ページには、耐パンク性やウェットグリップ評価が記載されていることが多いので、「通勤・ツーリング用」「全天候対応」といったキーワードのモデルを選ぶと、雨の日も含めた安心感が高まります。

また、雨が多い季節は、ブレーキシューやディスクパッドの摩耗が早く進みます。パッド残量が減った状態で雨の日を走り続けると、晴れの日にも制動力低下や異音の原因となるので、シーズンごとに自転車店で点検を受け、「雨の日にどのくらい走るか」を伝えたうえで、交換タイミングを相談すると安心です。

どうしてもつらい日は代替手段も検討

ここまで、雨の日自転車通勤を安全・快適にするための装備や走り方を紹介してきましたが、最後に強調しておきたいのは「無理をしない」ことです。

どれだけ高性能なレインウェアや防水バッグ、ディスクブレーキ付きの自転車を用意しても、台風やゲリラ豪雨、雷を伴う大雨の中を走るのは現実的ではありません。強風でふらついた瞬間に隣を大型車が通過すれば、それだけで重大事故につながるリスクがあります。水があふれたマンホールや冠水箇所は、穴の深さや路面状況が分からず、タイヤを取られて転倒する危険もあります。

また、雨の日の運転に慣れていない初心者や、久しぶりに自転車通勤を再開した人にとっては、小雨でも心理的な負担が大きいことがあります。そんなときは、「週のうち何日かは雨でも自転車」「残りは電車やバス」といった形で、通勤手段を組み合わせる発想が大切です。雨の量や風の強さ、自分の体調を見ながら柔軟に切り替えられるようにしておくと、「今日は頑張るべきか、やめるべきか」で悩む時間も減ります。

近年は、自転車配達員向けに雨の日装備を紹介する記事や動画も増えており、「どうしても自転車で走らざるを得ない」人たちの装備例は参考になります。ただし、配達員は慣れと技術が前提になっていることも多いので、そのまま真似するのではなく、自分のスキルやルート条件に合わせて取り入れることが重要です。

一方で、多くの会社では、悪天候時の遅刻や在宅勤務にある程度理解を示すケースも増えています。「警報級の大雨や台風のときは在宅勤務・時差出勤を検討する」といったルールを事前に上司や同僚と共有しておけば、「今日は電車で行った方がいいのに、自転車で無理をしてしまった」という状況を避けやすくなります。

自転車通勤を長く続けるコツは、「自転車に乗らない日」も含めて、ライフスタイルに無理のない形でシステム化することです。雨の日ごとに一喜一憂するのではなく、「この降り方なら自転車」「これを超えたら公共交通」といった、自分なりの基準を決めておきましょう。

総括:雨の日 自転車通勤を安全に楽しむために大切なこと

この記事の要点を整理します。

  • 雨の日の路面は乾燥路面の約1.5倍の制動距離が必要になるため、スピードとブレーキタイミングに余裕を持つことが重要である
  • マンホールや白線、グレーチング、タイル舗装など滑りやすい場所は、ラインを少しずらして走るなど、日頃から避ける走行ラインを決めておくと安全である
  • レインフードやバイザーは、周囲の確認を妨げない構造(透明ツバ・回転フードなど)のものを選び、見えにくさによる事故リスクを減らすべきである
  • 自転車利用者全員にヘルメット着用の努力義務が課されている現状では、特に雨の日こそヘルメットを活用し、レインウェアとの相性も考えて選ぶことが大切である
  • 自転車安全利用五則の内容を理解し、雨の日でも「車道左側通行」「信号遵守」「ライト点灯」「飲酒運転の禁止」「ヘルメット着用」といった基本ルールを徹底する必要がある
  • 傘差し運転は多くの自治体で禁止され、道路交通法上も罰則のある違反行為であり、2026年4月からは青切符制度により反則金5,000円の対象となる予定である
  • 雨の強さや風の有無、ルート条件、体調によって、自転車通勤を控える判断を柔軟に行えるよう、自分なりの基準を事前に決めておくことが重要である
  • 出発前にブレーキ・タイヤ・ライト・チェーンを点検する習慣をつけることで、小さな異常に早く気付き、事故リスクを減らせる
  • レインスーツ・レインコート・レインポンチョそれぞれの特性を理解し、通勤距離や走行スピード、服装に合った装備を選ぶと快適性が大きく向上する
  • 防水透湿素材のレインウェアは蒸れを抑え、長時間の雨天走行でも快適さと安全性を両立しやすい
  • シューズカバーとレインパンツの裾の絞りを併用すれば、足元の濡れと裾の巻き込み事故リスクを大きく減らせる
  • フェンダーやバスケットカバー、防水バッグを導入すれば、泥はねと荷物の濡れを大幅に軽減でき、服やPC・書類を守ることができる
  • 雨天時は早め弱めのブレーキを心掛け、タイヤ空気圧も指定範囲内でやや低めに管理することで、グリップと安全性を高められる
  • 台風や警報級の大雨・雷を伴うような日は、自転車通勤を選ばず、公共交通機関や在宅勤務に切り替えるべきである
  • 自転車通勤を長く続けるには、「雨でも走る日」と「乗らない日」をあらかじめ含めた無理のない通勤スタイルを設計し、天候や体調に応じて柔軟に切り替えることが大切である

雨の日の自転車通勤は、適切な装備と走り方、そして「無理をしない」ための判断基準さえ身につければ、安全で快適な移動手段として十分に成立します。自分の生活や職場環境に合わせて、できるところから一つずつ取り入れていってください。

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この記事を書いた人

はじめまして、チャリネコです。
子どもから大人まで、きっと誰もが一度は乗ったことのある自転車。
とても身近な乗り物だけど、実は知らないことっていっぱいありませんか?

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