自転車に乗っていると、ペダルを漕ぐたびにチェーンがカタカタと音を立てたり、走行中に突然チェーンが外れたりすることがあります。その原因の多くは、チェーンのたるみにあります。
この記事では、シングルスピードや内装変速のシティサイクル(いわゆるママチャリ)を中心に、チェーンがたるむ原因と自分で調整する方法を解説します。外装変速車(ロードバイクやクロスバイク)についても触れますが、基本的にはシングルスピード車のチェーン調整を主な対象としています。
自転車店に依頼した場合の工賃相場も紹介しますので、自分で直すか店に任せるかの判断材料としてお役立てください。
- チェーンのたるみは1〜2cm程度が適切とされている
- たるみの主な原因はチェーンの摩耗による「伸び」
- シングルスピード車はチェーン引きを使って調整できる
- 自転車店での調整工賃は500〜1,000円程度が目安
チェーンのたるみに関する基礎知識
- チェーンが「伸びる」とはどういう現象か
- たるみを放置すると起きるトラブル
- シングルスピード車と外装変速車の違い
- チェーンの適正なたるみ量と確認方法
チェーンが「伸びる」とはどういう現象か

自転車のチェーンがたるんでくると、「チェーンが伸びた」という表現がよく使われます。しかし、金属製のチェーン自体が物理的に伸びるわけではありません。では、なぜチェーンの長さが変わってしまうのでしょうか。
チェーンは、多数の金属プレート、ピン、そしてローラーで構成されています。自転車を走らせていると、ペダルを漕ぐたびにチェーンには大きな力がかかります。この力によって、チェーンの各コマを連結しているピンとローラーの部分が少しずつ摩耗していきます。
摩耗が進むと、ピンとローラーの間に微小な隙間が生じます。一つ一つのコマで見ればごくわずかな隙間ですが、チェーンは100個以上のコマで構成されているため、これらの隙間が積み重なると、チェーン全体の長さが長くなったように見えるのです。これが「チェーンが伸びた」と言われる現象の正体です。
また、チェーンが摩耗すると、縦方向だけでなく横方向の「しなり」も大きくなります。新品のチェーンはほとんど横に動きませんが、摩耗が進むとねじれやすくなります。このしなりの増加は、変速性能の低下やチェーン外れの原因となります。特に外装変速車では、ディレイラーがチェーンを横に移動させて変速を行うため、横のしなりが大きくなるとギアチェンジがスムーズにいかなくなることがあります。
チェーンの伸び具合を確認するには、「チェーンチェッカー」と呼ばれる専用工具を使う方法が一般的です。この工具をチェーンに当てることで、摩耗の進行度合いを簡単に測定できます。一般的に、走行距離3,000〜5,000kmでチェーン交換が推奨されているため、定期的にチェックすることをおすすめします。
たるみを放置すると起きるトラブル

チェーンのたるみを放置していると、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。最も分かりやすいのは、走行中にチェーンが外れてしまう現象です。特に信号待ちからの発進時や坂道を登っているときなど、ペダルに大きな力がかかるタイミングで外れやすくなります。
チェーンが外れると、突然ペダルが空回りして前のめりにバランスを崩す危険があります。交通量の多い道路や下り坂では重大な事故につながる恐れもあるため、たるみを感じたら早めに対処することが重要です。
また、たるんだチェーンはペダリング中に異音を発生させることがあります。カタカタ、ガチャガチャといった金属音が聞こえる場合は、チェーンとギアの噛み合わせが悪くなっているサインかもしれません。この状態で乗り続けると、チェーンだけでなく、スプロケットやチェーンリングといった駆動系パーツの摩耗も早めてしまいます。
さらに深刻なのが「歯飛び」と呼ばれる現象です。これは、ペダルを強く踏み込んだときにチェーンがギアの上で滑ってしまう状態を指します。伸びたチェーンを使い続けると、ギアの歯もチェーンの摩耗に合わせて削れていきます。そのため、新しいチェーンに交換しても、古いギアとの噛み合わせが悪く、歯飛びが発生することがあります。こうなると、チェーン交換だけでは済まず、スプロケットやチェーンリングの交換も必要になり、修理費用が膨らんでしまいます。
このように、チェーンのたるみを放置すると、安全性の低下、異音の発生、そして修理費用の増加といったさまざまな問題が生じます。定期的な点検と適切なメンテナンスで、これらのトラブルを未然に防ぐことが大切です。
シングルスピード車と外装変速車の違い

チェーンのたるみに対する対処法は、自転車の種類によって大きく異なります。特に重要なのが、変速機の有無による違いです。シングルスピード車(変速なし)や内装変速車と、外装変速車(ロードバイクやクロスバイクなど)では、チェーンの張りを維持する仕組みが根本的に異なるためです。
シングルスピード車や内装変速車の場合、チェーンの張りは後輪の位置によって調整されます。これらの自転車には「リアディレイラー」と呼ばれる変速機が付いていないため、チェーンの張りを自動的に調整する機能がありません。そのため、チェーンが伸びてたるんできた場合は、手動で調整する必要があります。
多くのシングルスピード車やママチャリには、「チェーン引き」と呼ばれる部品が後輪の車軸部分に取り付けられています。このチェーン引きのナットを回すことで、後輪を前後に移動させ、チェーンの張りを調整することができます。後輪を後方に引くとチェーンが張り、前方に押すとチェーンが緩みます。
一方、外装変速車の場合は、リアディレイラーに内蔵されたテンションスプリング(またはテンションプーリー)がチェーンの張りを常に維持しています。そのため、原則として手動でチェーンの張りを調整する必要はありません。変速時にチェーンがスプロケットを移動しても、ディレイラーが自動的にチェーンの張りを調整してくれるのです。
ただし、外装変速車でもチェーンが大きく伸びた場合は対処が必要です。リアディレイラーの調整範囲を超えるほどチェーンが伸びると、チェーンのたるみが解消できなくなります。この場合は、チェーンを適切な長さにカットして詰めるか、新しいチェーンに交換することが必要です。なお、リアディレイラーの「Bテンションスクリュー」はガイドプーリーとスプロケットの距離を調整するためのもので、チェーンの伸びによるたるみ自体を解消することはできません。
チェーンの適正なたるみ量と確認方法

チェーンのたるみは、適切な量を維持することが重要です。たるみすぎればチェーン外れの原因となり、張りすぎればペダルが重くなったり、チェーンやギアに過度な負担がかかったりします。では、どの程度のたるみが適切なのでしょうか。
一般的に、シングルスピード車や内装変速車では、チェーンの中央付近を指で上下に動かしたときに、1〜2cm程度のたるみがあるのが目安とされています。また、HOZANの資料では上下の揺れが約6mm(約1/4インチ)程度を推奨している例もあります。実際のところ、適正なたるみ量には多少の幅があり、自転車の種類やチェーンの太さによっても異なります。
たるみを確認する際は、まず自転車を安定した場所に置きます。スタンドを立てて後輪を浮かせるか、壁に立てかけて固定しましょう。次に、チェーンの中央付近(クランクとスプロケットの中間あたり)を指でつまみ、上下に動かしてみます。このときのたるみ幅を確認してください。
たるみが2cm以上ある場合は、調整が必要と考えてよいでしょう。逆に、チェーンがピンと張っていて上下にほとんど動かない状態は、張りすぎている可能性があります。張りすぎた状態でペダルを回すと、ペダルが重く感じたり、異音が発生したりすることがあります。
チェーンのたるみは、月に1回程度の頻度でチェックすることが推奨されます。また、チェーン外れが発生した場合は、すぐにたるみ具合を確認してください。日常的なメンテナンスとして、チェーンへの注油や清掃を行う際に、ついでにたるみも確認する習慣をつけると効果的です。なお、チェーンの錆や油切れもたるみやチェーン外れの原因となるため、定期的な清掃と注油を心がけましょう。
自分でチェーン調整する方法と工賃相場
- 調整に必要な工具
- チェーン調整の手順(ステップバイステップ)
- 調整時の注意点とよくある失敗
- 自転車店に依頼した場合の工賃相場
調整に必要な工具

チェーンの張り調整を自分で行うためには、いくつかの工具を用意する必要があります。特殊な工具は不要で、一般的なレンチやドライバーがあれば対応できます。ホームセンターや100円ショップでも入手可能なものばかりです。
まず必須なのが、15mmのレンチです。後輪を固定している車軸の両側にあるナット(ハブナット)を緩めたり締めたりするために使用します。このナットは自転車の安全に直結する重要な部品であるため、しっかりと締め付ける必要があります。できれば安価なものではなく、ある程度しっかりした工具を使用することをおすすめします。
次に、10mmのレンチまたはナットドライバーが必要です。これはチェーン引きのナットを回すために使用します。チェーン引きは車軸の近くにある小さな部品で、10mmのナットで調整を行います。細かい作業になるため、ナットドライバー(ソケットドライバー)があると作業がしやすくなります。
さらに、プラスドライバー(2番サイズ)も用意しておくと便利です。多くのママチャリでは、後輪のブレーキがフレームに固定されている部分にネジが使われています。チェーン調整の際には、このブレーキ固定部も緩める必要があることがあるため、プラスドライバーが活躍します。ただし、車種によってはプラスドライバーではなく8mmや10mmのレンチが必要な場合もあります。作業前にブレーキ固定部を確認してください。
これらの工具に加えて、あると便利なのがゴム手袋やウエス(布切れ)です。チェーンには油が塗られているため、素手で作業すると手が黒く汚れてしまいます。また、調整後にハブナットを締める際は、手に力が入りやすいように軍手を使用するのもよいでしょう。
工具を揃える際の費用は、それぞれ数百円から1,000円程度で購入できます。チェーン調整は今後も定期的に必要になる作業ですので、工具を一式揃えておくと長期的に見てお得です。自転車専用の工具セットも販売されていますので、これから自転車のメンテナンスを始めたい方は検討してみてもよいでしょう。
チェーン調整の手順(ステップバイステップ)

シングルスピード車(ママチャリ)のチェーン調整は、以下の手順で行います。慣れれば10〜15分程度で完了する作業です。初めての方は、焦らずに一つひとつのステップを確実に進めてください。
まず、自転車を安定した場所に置きます。両立スタンドがある場合は立てて後輪を浮かせた状態にします。片足スタンドしかない場合は、壁に立てかけるなどして自転車が倒れないようにしてください。
次に、15mmのレンチを使って後輪の両側にあるハブナットを緩めます。完全に外す必要はなく、タイヤが左右に動く程度まで緩めれば十分です。ナットを緩めすぎると後輪が外れてしまうので注意してください。
続いて、ブレーキ固定部のネジを緩めます。多くのママチャリでは、後輪ブレーキのアーム部分がフレームにネジ止めされています。このネジをプラスドライバーで緩めることで、後輪が前後に動きやすくなります。
ここからがチェーン調整の本番です。後輪の車軸付近にある「チェーン引き」を探してください。チェーン引きは車軸と平行に取り付けられた小さな部品で、中央に10mmのナットが付いています。このナットを時計回りに回すと、後輪が後方に引かれてチェーンが張ります。
調整のポイントは、左右のチェーン引きを均等に締めることです。片側だけを大きく締めると、タイヤがフレームの中央からずれてしまいます。左を少し締めたら右も少し締める、というように交互に調整していきましょう。
適切な張りになったら、チェーンの中央を指で上下に動かして、1〜2cm程度のたるみがあるか確認します。たるみが足りなければチェーン引きを少し緩め、たるみが大きすぎればもう少し締めます。
最後に、各部を締め直します。まず、後輪がフレームの中央にあることを目視で確認してください。確認できたら、ハブナットを左右交互に少しずつ締め付けていきます。片側を一気に締めるとタイヤのセンターがずれてしまうため、必ず交互に締めてください。ブレーキ固定部のネジも忘れずに締め直しましょう。なお、ハブナットを締めるとチェーンの張りがわずかに強くなることがあるため、最終確認としてもう一度たるみをチェックすることをおすすめします。
調整時の注意点とよくある失敗
チェーン調整は比較的簡単な作業ですが、いくつかの注意点を押さえておかないと、かえってトラブルを招くことがあります。よくある失敗例とその対策を紹介します。
最も多い失敗が、タイヤのセンターがずれてしまうことです。これは、左右のチェーン引きを均等に調整しなかったり、ハブナットを片側だけ一気に締めてしまったりすることで起こります。タイヤがずれた状態で走行すると、ブレーキシューがタイヤに当たったり、フレームとタイヤが接触したりする恐れがあります。調整後は必ず、後輪がフレームの中央にあるかを目視で確認してください。
次によくあるのが、チェーンを張りすぎてしまうケースです。チェーンをピンと張りすぎると、ペダルを回すのが重くなります。また、チェーンやスプロケット、ベアリングなどに過度な負担がかかり、パーツの寿命を縮める原因にもなります。調整後はペダルを手で回してみて、スムーズに回るかどうかを確認しましょう。ゴリゴリとした抵抗を感じる場合は、張りすぎている可能性があります。
逆に、チェーンが緩すぎる状態も問題です。適切なたるみは1〜2cm程度であり、これを大きく超えるとチェーンが外れやすくなります。特に発進時や変速時(内装変速車の場合)にチェーンが外れやすくなるため、たるみすぎには注意が必要です。
また、ハブナットの締め付けが甘いと、走行中に後輪がずれてしまう危険があります。ハブナットは自転車の安全を支える重要な部品ですので、しっかりと締め付けてください。ただし、過度な力で締めすぎると、ナットや車軸をなめてしまうことがあります。適度な力でしっかり締めることを心がけましょう。
最後に、ブレーキの確認を忘れないでください。チェーン調整でブレーキ固定部を緩めた場合、締め直しを忘れるとブレーキが正常に作動しなくなります。また、チェーンを張る(後輪を後ろに下げる)と、ブレーキワイヤーも引っ張られてしまい、ブレーキが常にかかった状態(引きずり)になることがあります。作業の最後には必ずブレーキの効き具合を確認し、必要であればブレーキワイヤーのアジャスターを回して調整してください。調整完了後は、必ず前輪・後輪ともにブレーキが問題なく効くかを確認してから走行してください。
自転車店に依頼した場合の工賃相場

チェーン調整を自分で行うのが不安な場合や、工具を持っていない場合は、自転車店に依頼することも選択肢の一つです。プロに任せることで、確実かつ安全に調整してもらえます。では、実際にどの程度の費用がかかるのでしょうか。
チェーンの張り直し(調整のみ)の工賃は、一般的に500〜1,000円程度が目安とされています。これは比較的簡単な作業であるため、短時間で対応してもらえることがほとんどです。なお、自転車を購入した店舗では、購入後のアフターサービスとして無料で調整してもらえる場合もあります。購入店が近くにある場合は、まず問い合わせてみることをおすすめします。また、サイクルベースあさひなどの大手チェーン店では、会員サービスの一環として基本的なメンテナンス工賃が無料または割引になるケースもあります。
一方、チェーンが大きく伸びていて交換が必要な場合は、工賃が高くなります。チェーン交換の工賃は1,500〜5,000円程度が相場とされていますが、店舗によって差があります。いくつかの店舗の例を挙げると、サイクルシティーKATOでは1,650円、ワイズロードでは2,750円、ノムラサイクル(一般車)では3,000円、サイクルマンでは3,500円からとなっています。
工賃が変動する要因としては、自転車のタイプが挙げられます。チェーンがカバーで完全に覆われている「全ケースタイプ」の自転車は、カバーの取り外し・取り付けに手間がかかるため、工賃が高くなる傾向があります。また、スポーツバイク(ロードバイクやクロスバイクなど)は、チェーン交換後に変速調整が必要となるため、専門的な技術料が加算されることがあります。
電動アシスト自転車の場合は、さらに費用が高くなることがあります。電動アシスト自転車には高耐久の専用チェーンが使われていることが多く、チェーン自体の価格も高めです。また、モーターやバッテリー周りの構造が複雑なため、作業に時間がかかる場合もあります。
修理を依頼する前に、事前に店舗へ電話やウェブサイトで料金を確認することをおすすめします。見積もりを出してもらえる店舗も多いので、複数の店舗を比較検討してもよいでしょう。
総括:自転車チェーンたるみ調整のまとめ
この記事のまとめです。
自転車のチェーンたるみは、適切に管理することで快適な走行と安全性を維持できます。シングルスピードやママチャリは自分で調整可能ですが、不安な場合は自転車店への依頼も検討してください。
- チェーンのたるみは1〜2cm程度が適切とされている
- 「チェーンが伸びる」のは金属が伸びるのではなく摩耗による隙間が原因
- 走行距離3,000〜5,000kmでチェーン交換が推奨されている
- たるみを放置するとチェーン外れや異音、歯飛びの原因となる
- シングルスピード車はチェーン引きを使って手動で調整する
- 外装変速車はリアディレイラーが自動で張りを維持する仕組みになっている
- Bテンションスクリューはプーリーとスプロケットの距離調整用で、たるみ解消には使えない
- 調整には15mmレンチ、10mmレンチ、プラスドライバーが必要(車種により8mmレンチも)
- 後輪のハブナットを緩めてからチェーン引きを調整する手順となる
- 左右均等に調整してタイヤのセンターを合わせることが重要
- 張りすぎはペダルが重くなり部品に負担がかかる
- チェーン調整の店舗工賃は500〜1,000円程度が目安
- チェーン交換の工賃は1,500〜5,000円程度が相場とされている
- 全ケースタイプや電動アシスト自転車は工賃が高くなる傾向がある
- チェーンを張ると後輪が後退し、ブレーキワイヤーの調整が必要になることがある
- 月1回程度の定期点検でたるみをチェックすることが推奨される
- チェーンの清掃と注油も摩耗防止に効果的とされている
※この記事の情報は主にシングルスピード・内装変速のシティサイクル(ママチャリ)を対象としています。外装変速車やスポーツバイクでは仕様が異なる場合があります。

